ISO45001について 第3回 「4 組織及びその状況」
こんにちは、ISOコム マネジメントコンサルタントの小川 次郎です。
このブログにアクセスしていただき、ありがとうございます。
前回は、「意図した成果」及び「規格独特の用語」についてお話させていただきましたが、
今回はISO 45001の要求事項の「4 組織の状況」を中心にお話させていただきます。
システムを構築するうえで、組織の状況を確認しておく
この4項には、「4.1 組織及びその状況の理解」「4.2 働く人及びその他の利害関係者のニーズ及び
期待の理解」「4.3 OH&Sマネジメントシステムの適用範囲の決定」「4.4 OH&Sマネジメント
システム」の4つの項番が設けられております。
この4項は、システムを構築するうえで、組織の状況を確認しておきましょうということですね。
4項の中の一つ目「4.1 組織及びその状況の理解」と2つ目「4.2 働く人及びその他の利害関係者のニーズ及び期待の理解」は、互いにリンクしているのですが、組織のシステム構築に当たって、
自分たちの業務プロセスをよく理解して、安全衛生上の課題(規格は内部及び外部の課題)を
はっきりさせましょうと言っています。
そして、これにはISO45001では“働く人及びその他の利害関係者のニーズ及び期待を理解しておく必要がありますね”と
いうことですね。
具体的には、安全衛生に関して、顧客、エンドユーザー、監督官庁、同業他社、下請負者、地域社会も含めた社会等の外部の利害関係者の認識や価値観みたいなものが、外部の課題であり、組織の働く人(前回に定義した、労働者より広い概念)の認識や価値観やガバナンス(組織の掌握)、力量、組織のシステム上の問題みたいなものが内部の課題であり、これらを把握しておくことが重要であり、これらの要望というか、要請に答えて行くことがこのシステム構築に重要だと言っているように思います。
これでも分かり難いですね。もっと具体的に例示すると、以下のようなことです。
安全衛生に関しての「働く人及びその他の利害関係者のニーズ及び期待」を洗い出し、
それに答えて行くのに必要な課題は何かということですね。
思いつくままに列挙しただけでも、以下のようなものが考えられます。
- ・設備(が貧弱である)
- ・必要な有資格者(が不足している)
- ・管理システム(が脆弱である)
- ・働く人の年齢層(が偏っている)
- ・必要な作業員の数(が不足している)
- ・ヒヤリハット的な事項も含めて、災害情報管理(ができていない)
- ・法令情報の収集、周知(に問題がある)
- ・法令順守(が徹底されていない)
- ・健康管理(が不十分である)
- ・近隣住民或いは地域社会、広域な社会(世論)への広報活動(が不足している)
- ・下請負者或いは委託業者へのコミュニケーション(が不足している)
- ・ヒヤリハット的な事項も含めて、災害件数、災害予備軍が(同業他社に比較して多い)
- ・衛生管理(がまだまだである)
- ・組織の立地(が住宅地域にある)
- ・ ・・・・・
このように書き出すと、何となくイメージが湧きますね。
( )の前までが「ニーズ及び期待」であり、( )内まで含めると「課題」と言えますね。
システム構築にあたって、みんなで、ブレーンストーミングするとよいですね。
次は、「4.3OH&Sマネジメントシステムの適用範囲」ですね。
適用範囲はOH&Sマネジメントシステムを確立するための機能、責任及び権限を持つ限り、
全体でも部分でも良いのです。ただし、利害関係者の誤解を招かないものであることが望ましいですね。
つまり、組織の自由に決めてもよいのです。
例えば、全社、○○工場、○○支店、○○作業所、もっと細かな単位である○○生産ラインでもよいのです。
ただし、一旦適用範囲を決めると、その適用範囲には、この規格要求事項をすべて満たす必要があります。
また、この適用範囲は文書化及び利用可能な状態(利害関係者の要求があれば公開する等)を求められていますので、注意を要します。
このシステムは、すべての業務プロセス、すべての働く人(従事者)が関わらないと上手く行かない
システムなので、私の経験から言えば、小さな単位で、スタートして、拡大していく方が、
上手く行くように思います。
次の「4.4労働安全衛生マネジメントシステム」は、“この規格の要求事項に従って、
システムを作って、実施、維持、改善してくださいね”ということだけです。
どうですか、このシステムにチャレンジしてみようという気になりましたか。
次回はISO45001「5 リーダーシップ及び働く人の参加」すなわち、“組織のトップのするべきこと”と
“働く人のするべきこと”についてです。
組織はトップが旗を振らないと動きません。また、同時にそれだけでは上手く行きません。
それには下の者の協力も必要ですね。そんなことが書かれています。
次回も見てくださいね。
【ISO45001についての記事】
【第1回】 ISO45001:2017の発行の動向と既存のシステムとの大きな変化
【第7回】「6 計画」「6.2 OH&S目標及びそれを達成するための計画策定」
【第8回】「7 計画」 「7.1 資源」「7.2 力量」「7.3 認識」
【第9回】「7 計画」 「7.4 コミュニケーション」「7.5 文書化した情報」
認証取得のお手伝いをします!45001のコンサルティングなら当社にお任せください!
2018/02/28
【運用とは? ISO9001 2015年版(改正/改訂)】
附属書SL(注1)の影響により、ISO9001 2015年版(改正/改訂)では『8. 運用』とのタイトル表示と
なり、分りにくくなりましたが、ISO9001 2008年版の『7. 製品実現』に相当します。
まず、8.1ですが、ここでは具体的に要求があるというよりは、8.2以降の要求事項を総括しているといえる
でしょう。
ISO9001 2008年版の7.1 と比較すると、a)の“品質目標”及びc)の“検証、妥当性確認、監視、測定”に関する
要求がなくなっています。
“品質目標”に関しては、6.2でも品質目標についての要求事項が出てくることから、混乱を防止するために
使用を避けたものと思われます。
ただし、ISO9001 2008年版の7.1で使われていた“品質目標”という言葉は、元々は製品及びサービスの
品質に関して自らが設定する目標(自社が設定する要求)の意味合いでしたので、
ISO9001 2015年版(改正/改訂)では“要求事項”という文言に含められてしまったとも考えられます。
また、“検証、妥当性確認、監視、測定”については、8.1からは省略されましたが、
8.4.3、8.5.1などで個別具体的に要求されていますので、総合的には変化はないと思われます。
この8.1は読み方が難しいのですが、以下のように読んでは如何でしょうか。
製品及びサービスの提供に関する要求事項を満たすために必要なプロセスを、計画し、実施し、かつ、
管理しなければならない。
このプロセスにはa)~e) を使って(織り込んで)、計画し、実施し、管理しなければならない。
規格では“箇条6で決定した取り組みを実施するために”という文言が挿入されています。
しかし、プロセスを計画する場合には、その計画を実行し、目的を達成する上で障害となるリスク、
達成に繋がる機会については当然に考慮しますので、わざわざ取り上げるまでもないと思います。
ISO9001 2015年版(改正/改訂)となって目新しいところは、変更に対する要求事項です。
変更に関しては、8.2.4(製品及びサービスに関する要求事項の変更)、8.3.6(設計・開発の変更)、
8.5.6(変更の管理)にも現れます。このうち、8.5.6は新たに規定されたものです。
8.4、8.6では、直接には変更に関する要求事項が出てきませんが、これらについても8.1の要求事項が
適用されますので、変更の内容・程度に応じた管理が必要になります。
このように、変更の管理に関しては、『品質保証』の観点からは強化されたものと考えられます。
また、外部委託したプロセス(アウトソース)の管理について規定されています。
8.4に詳細が要求されているので、8.4でしっかり対応しておれば、ここは読み飛ばしておいて
良いでしょう。
しかし、わざわざ8.1 にも記載されている意義についてはよく理解しておくことが必要だと思います。
自社のプロセスがしっかり管理されていたとしても、自社のプロセスに繋がる外部委託先での
プロセスの管理が不十分であれば、全体としては十分な管理が出来ていないことになります。
プロセスの結果は顧客に提供するものである以上、自社だけでなく、外部委託先におけるプロセスに
ついても適切に管理することが要求されているといえます。
このことを理解したうえで、8.4 で対応すれば良いと思われます。
注1:“ISO/IEC 専門業務用指針,第1部 ISO専門補足指針 附属書SL”
この附属書では、マネジメントシステムを制定/改訂する場合に守るべき手続き、従うべき上位構造、
共通に含めるべき中核となるテキスト、用語、定義が与えられており、各マネジメントシステムは
可能な範囲でこれを守ることが定められています。
【ISO9001の改正についての過去記事】
ISO9001の認証取得支援・運用更新代行
この記事を読んでISO9001の取得を検討してみようと考えている企業のご担当者様、ぜひご連絡ください!弊社でISO9001認証取得やその後の更新作業のコンサルティングをお手伝いしております。
当社のコンサルタントがISO9001について詳しくご説明しています。
2018/02/19
ISO14001も安全衛生を考慮したい 化学物質640品目の対応について
こんにちは。ISOコム マネジメントコンサルタントの亀田 昭子です。
このブログにアクセスしていただき、ありがとうございます。
今回のブログからISO14001:2015年度版改正(改訂)8.1項「運用の計画及び管理」の活動について
考えていきたいと思いますが、今回は、化学物質に対する労働安全衛生法について考えます。
ISO14001と労働安全衛生法の関係とは?
皆様が環境ISOの認証準備を行っているとき、環境関連の法規制として労働安全衛生法を考慮している
でしょうか?
労働安全マネジメントシステムのISO45001:2017ではないので、労働安全衛生法は関係ないとおっしゃる皆様もいらっしゃるかもしれませんが、
ISO14001でも労働安全衛生法の対応を考える必要があります。
また労働安全衛生法は、ISO9001でも7.1.4項の環境として新規に追加された心的な環境を考えるにあたり、
ストレスチェック等考慮する必要があります。
今回のブログでは、化学物質640品目を皆様の会社で使用しているかどうか、
また使用している場合は、その表示がきちんと見えるようになっているか、
また、リスクアセスメントを行っているか等の要求があることについて、考えていきたいと思います。
化学物質のリスクアセスメントとは?
この内容は、化学物質による健康被害など労働者の安全と健康の確保を充実するために公布されたそうで、
平成28年6月よりリスクアセスメントが義務化されています。
法律上の実施義務としては、全ての場合が実施義務となるのではなく、対象の化学物質を原材料として
新規採用や変更、対象物を製造、取り扱う業務の作業方法の新規採用、変更した場合に
リスクアセスメントが必要となります。
先日、私のお客様がISO14001:2015版の審査を受けた時、現場ツアーで有害物質の表示について
コメントをいただいていました。
640品目の化学物質について、労働安全衛生法に基づいた対応をされていますが、
ちょうど表示(GHSマーク)が見にくかったようです。
また、私が同席した審査においても、化学物質の取扱い、表示については、審査員の方がかなり気にされて
いましたので、今後審査を受けられる皆様も注意して対応されるといいと思います。
化学物質のリスクアセスメントの実施義務とは?
労働安全衛生法では、一定の危険有害性のある化学物質(640物質)について、
1.事業場におけるリスクアセスメントが義務づけられました。
(先ほど記載したように対象物を新規・変更採用や新規・変更使用の場合になります)
2.譲渡提供時に容器などへのラベル表示が義務づけられました。
対象は、業種、事業場規模にかかわらず、対象となる化学物質の製造・取扱いを行う
すべての事業場が対象となります。
化学物質のリスクアセスメントの実施方法とは?
そのため、まず皆様の会社で、GHSマーク(絵表示)が表示されている化学物質を使っているか
確認していただき、使用している場合は、SDS(安全データシート)を確認しましょう。
SDS交付義務のある化学物質640品目を使用している場合、リスクアセスメントを実施する必要があります。
リスクアセスメントとは、化学物質やその製剤の持つ危険性や有害性を特定し、それによる労働者への
危険または健康障害を生じる恐れの程度を見積もり、リスクの低減対策を検討することをいいます。
まずは、化学物質640品目の使用調査から始めてみるのがいいと思います。
また、皆様の協力会社に業務をお願いしている場合は、ISO14001:2015版の8.1項では、
外部提供者に対する伝達も要求されていますので、その会社の使用状況も含めて確認してみてください。
皆様が、作業者への安全配慮をどう考えるかを考慮していただき、リスクアセスメントの実施を
検討されたらいかがでしょうか?
詳細は、労働安全衛生法、化学物質640品目などでインターネット検索していただくと
わかりやすい説明や化学物質リスク簡易評価法などがありますので、確認してみるといいと思います。
次回は、ISO14001:2015年度版改正(改訂)8.1項「運用の計画及び管理」の要求事項の対応について
考えていきたいと思います。
今回の記事はいかがでしたか?
ISO14001を取得する、或いは、取得したが、労働安全衛生法への対応が不安だなぁ、とか、
化学物質の管理、リスクアセスメントのやり方が分からない等を含めて、
ISO14001の認証取得や更新審査対応は、ぜひ当社のコンサルタントにご相談ください!
ISOコム株式会社お問合せ窓口 0120-549-330
【ISO14001に関する過去記事】
4.1項「組織及びその状況の理解」、4.2項「利害関係者のニーズと期待の理解」、6.1項「リスク及び機会の取組み」について(その1)
4.1項「組織及びその状況の理解」の「内部及び外部の課題」について(その2)
4.2項「利害関係者のニーズと期待の理解」について(その3)
2018/02/13
ISO45001:2017について 第2回 「意図した成果」及び「規格独特の用語」
こんにちは、ISOコム マネジメントコンサルタントの小川 次郎です。
このブログにアクセスしていただき、ありがとうございます。
前回は、「ISO45001:2017規格の発行の動向」と、「OHSAS18001等の既存のシステムとの大きく変わるところ」についてお話させていただきましたが、
今回は、規格の中によく出てくる「意図した成果」と「規格独特の用語の意味するところ」を
中心にお話させていただきます。
主題に入る前に、ISO45001:2017 FDISが、この1月28日にFDISへの投票結果が公表され、
Pメンバー国の賛成が93%(57/61カ国)、全メンバーの反対が6%(4/66カ国)となりFDISは承認され、今後、ISO中央事務局が約2~3週間かけてISO45001:2017発行への準備を進めるとのことをお伝えしておきます。
【意図した成果】
「意図した成果」はシステムの目指すところなので、当たり前のことですが、この規格にはこのフレーズ「労働安全衛生マネジメントシステムの意図した成果」が良く出てきます。
規格の序文に、労働安全衛生マネジメントの意図した成果は「働く人の労働に関係する負傷及び疾病を防止すること、及び安全で健康的な職場を提供すること」と示されています。
このことは、我が国の労働安全衛生法(以下、「安衛法」という)の第一条に「・・・・・職場における労働者の安全と健康を確保するとともに、快適な職場環境の形成を促進することを目的とする。」としており、
このシステムの目指すところとほぼ同じですね。
異なるところは、システムでは対象者が「働く人の・・・」であり、安衛法では「労働者の・・・」です。
これは、次の「用語の意味」のところでも、お話しますが、システムの「働く人」の方が安衛法の
「労働者」より広範囲の人を対象にしている点です。
すなわち
働く人(トップマネジメント、管理者、非管理者を含む) > 労働者(賃金を支払われている人)
・・・・こんなエピソードがあります・・・・
・・・・ある時、建設現場で作業員が足場から墜落をして、血しぶきの飛び散るような大けがをしました。
職員は大慌てで、「119」通報をし、支店と労働基準監督署(以下「労基」という)に一報を入れました。
一時間ぐらいして、労基の監督官が来場して、現場検証と、関係書類、関係職員、作業員への聴取を始めました。
しかし、これは、安衛法の対象の事故ではありませんね」と言って現場を去りました。
“これはなぜだと思いますか?”
この被災者(作業員)は、賃金台帳を見る限り、賃金では無く、受取(請負)になっており、
労働者ではなく、経営者と見なされた結果です。安衛法の対象はあくまで労働者であり、経営者ではないからです。
このISO 45001労働安全衛生マネジメントシステムの「働く人」には、経営者、管理者、非管理者すべてが含まれています。この点が安衛法の「労働者」との大きな違いです。
さらに、この労働安全衛生マネジメントシステムでは「効果的な予防保護処置をとることによって危険源を除去し、労働安全衛生リスクを最小化することは、組織にとって非常に重要である。」と示されています。
この考えに立って、規格要求事項が作成されたいると言えるでしょう。
【ISO45001独特の用語】
次に用語の説明ですが、ISO規格は、普段使い慣れていない独特の「用語」や「言い回し」が多く出てきて、取っ付き難いのではないかと思います。規格書にも多くの定義が記述されていますが、
ここでは特に理解に注意すべき「規格独特の用語」のみを説明をしておきます。
1.働く人(worker):
規格の用語及び定義に記載されている通り、トップマネジメント、管理者、非管理者を含みます。
具体的内は、経営者、ボランティア、学生インターンシップ、見習い、パート職員、臨時雇用員、
派遣労働者等が含まれ、雇用契約に関わらず働く人全てが被災しないような配慮を求めています。
前述した通り、安衛法の「労働者」より広い意味を持っているので注意が必要です。
2.インシデント(incident):
規格の用語及び定義をそのまま書くと、余計に分からくなりそうなので、平易に書きます。
簡単に言えば、「労働災害及びヒヤリハット的な事象」と言えます。
3.考慮する(consider)と考慮に入れる(take into account):
他のISO規格も同じですが、考慮する(consider)は「考える必要はあるが、必ずしも採用しなくても良い」という意味で使用され、考慮に入れる(take into account)は「採用を前提に、考える必要がある」という意味で使用されています。
4.確実にする(ensure):
責任は委任(responsibility)してもよいが、実行されたことを確認する説明責任(accountability:説明だけでなく、結果についても責任を負う)は委任できない。
簡単に言えば、「部下に仕事を任せても、組織のトップが責任を負うこと」と言えます。
5.維持する(maintain)と保持する(retain)
維持する(maintain)は「変化あるいは変更の可能性のあるものを最新の状態にしておくこと」を意味し、保持する(retain)は「記録のように変化あるいは変更の可能性のないものを、保ち続けること」を意味します。
まだまだ、たくさんの「規格独特の用語」がありますが、次回からの規格要求事項の内容のうち
私の経験も踏まえて、私なりの記述をしていきたいと思っております。楽しみにしてください。
【ISO45001についての記事】
【第1回】 ISO45001:2017の発行の動向と既存のシステムとの大きな変化
【第7回】「6 計画」「6.2 OH&S目標及びそれを達成するための計画策定」
【第8回】「7 計画」 「7.1 資源」「7.2 力量」「7.3 認識」
【第9回】「7 計画」 「7.4 コミュニケーション」「7.5 文書化した情報」
認証取得のお手伝いをします!45001のコンサルティングなら当社にお任せください!
2018/02/13
【ISO9001 2015年改正版における『適用不可能項目』とは?】
こんにちは。マネジメントシステムコンサルタントの柏木 博です。
今回は、ISO9001:2015年版(改正/改定)の 4.3 品質マネジメントシステムの適用範囲の
決定における、いわゆる“適用不可能項目”について考えてみたいと思います。
一般的に“適用除外項目”“適用不可能項目”という表現が使用されますが,正確な表現ではありません。
規格では“要求事項の除外”“適用不可能であることを決定した要求事項”といった表現になっています。
即ち、規格の条項単位ではなく、それぞれの“shall”(原文は英語です。JISでは“しなければならない”と
訳されています。)で表される要求事項の一つずつについて、その要求事項を適用するかどうかを
決めることが出来ます。
ISO9001:2008年版では、“要求事項が適用不可能な場合には、その適用の除外を考慮することが出来る。”
ことになっています。
“その適用の除外を考慮することが出来る。”の文言が一人歩きし、恣意的に除外している事例が
あったことから、ISO9001:2015年版(改正/改定)では“除外”という用語を使用しなくなりました。
実質的にはISO9001:2015年版(改正/改定)の要求事項と変わりありません。
さて、お伝えしたいことはこれからです。
“要求事項が適用不可能な場合”あるいは“適用不可能であることを決定した要求事項”との表現から、
どのような印象をもたれるでしょうか。
「規格の要求事項に対しては、何らかの形で適用できるのであれば、その要求事項を織り込んだ
QMSにする必要がある。」と考えるのが普通であろうと思います。
しかし、果たして、本当にそこまでして自社のQMSに規格の要求事項を取り込むことが必要なの
でしょうか。
規格では、『適用不可能なことを決定した適用事項』については、
『顧客要求事項及び法令・規制要求事項を満たす製品(サービス)を提供するという組織の能力
又は責任に何らかの影響を及ぼすものであるならば、』(ISO9001:2008年版)、
又は『組織の製品及びサービスの適合並びに顧客満足の向上を確実にする組織の能力
又は責任に影響を及ぼさない限り、』(ISO9001:2015年版(改正/改定))要求事項を適用しなくても
よいことになっています。
この“適用不可能”について原文を見てみますと、
ISO9001:2008年版では、“cannot be applied”、
ISO9001:2015年版(改正/改定)では“is not applicable / not being applicable”と、
いずれも“not”が使用されており、“不可能”というイメージである“never”という表現は使用されて
おりません。
とすると、
自社のQMSの中では適用していない、あるいは適用することに無理がある要求事項なども
“適用不可能な要求事項”の対象に加えても良いのではないでしょうか。
ポイントは、それらの要求事項を適用しなくても、自社のQMSが提供する製品及びサービスの適合
並びに顧客満足の向上を確実にする組織の能力又は責任に影響を及ぼすことがないことだと思います。
ただし、組織の能力及び責任に影響を及ぼすことがないことを確実に証明できることが必要であると
考えられます。
規格の要求事項は、原則的には品質保証能力の実証及び顧客満足度の向上を目指すうえで効果的です。
従って、可能な範囲で要求事項を取り入れたQMSを構築することが推奨されます。
しかし、一方で、提供する製品及びサービスの適合並びに顧客満足の向上を確実にする組織の能力
又は責任に全く影響を及ぼすことがない要求事項まで取り入れることは、管理業務や組織運営の負荷が
増大し、結果的に品質保証能力の実証及び顧客満足度の向上に悪影響を生じる可能性があります。
このような悪影響(=リスク)が生じない範囲で規格要求事項を取り込んだQMSを構築し、
運用することが、規格の思想に一致しているのではないかと思われます。
ISO9001:2015年版(改正/改定)規格の仕組みは、品質保証の観点からは優れた内容です。
出来るだけ多くの会社に利用して欲しいと願っています。
このためにも、自社の品質保証の観点から自社のスタイルにあった仕組みを取り入れることにより、
多くの会社がISO9001:2015年版(改正/改定)規格に取組んでいただけることを願っています。
【ISO9001の改正についての過去記事】
ISO9001の認証取得支援・運用更新代行
この記事を読んでISO9001の取得を検討してみようと考えている企業のご担当者様、ぜひご連絡ください!弊社でISO9001認証取得やその後の更新作業のコンサルティングをお手伝いしております。
当社のコンサルタントがISO9001について詳しくご説明しています。
2018/02/05