【設計・開発(1) ISO9001 2015年版】
こんにちは、ISOコム マネジメントコンサルタントの柏木 博です。
このブログにアクセスしていただき、ありがとうございます。
“8.3 製品及びサービスの設計・開発”については、数回に分けて記載します。
先ず、“設計・開発”の視点です。
ISO9000 2015年版の『設計・開発』の定義では、“対象に対する要求事項を、その対象に対するより
詳細な要求事項に変換する一連のプロセス”となっています。
これは、一見、ISO9000 2006年版の定義よりも広範な範囲で取り扱っているように見えます。
しかし、本質的な変更はされていないそうです。
また、ISO9001 2015年版(改正/改訂)ではISO9001 2008年版と同じく“製品の設計・開発”及び
“サービスの設計・開発”のみが『設計・開発』の対象となっています。
従って、“工程の設計・開発”などについては適用対象外であることになっています。
しかし、現時点で明確になっていない点は、それをどの立場で判断するかということだと思います。
例えば、FAX付き電話機について、子機の組立のみを外注している製造メーカーの場合を
考えてみましょう。
FAX付き電話機を購入しようとした場合、顧客視線からは電話機が備えているFAX及び電話機としての
機能、性能に着目し、希望する機能・性能を満たす製品の購入を希望するでしょう。
このため、顧客目線では電話機が備えているFAX及び電話機としての機能・性能に関する計画が、
設計開発に該当することになります。
“工程の設計・開発”に該当する電話機の子機の“組立方法の計画”については、設計・開発の対象とは
みなすことは無いでしょう。
電話機メーカーの立場からは、FAXを含む電話機全体の機能・性能のほか、FAX、電話機及び
各部品が備えるべき機能・性能についても計画が必要であり、これも設計・開発の対象になると思います。
それでも、電話機、又は部品の組立方法については、それが部品の機能・性能に影響しない限り、
設計開発の対象となることはないでしょう。
これに対し、電話機メーカーから依頼を受けた子機の組立メーカーでは“組立作業”をサービスと
することから、“工程の設計・開発”に該当する“組立方法の計画”を設計・開発として捉える見方があります。
“工程の設計・開発”に関しては、ISO9001 2015年版(改正/改訂)“8.3 製品及びサービスの設計・開発”の
要求事項がマッチしない場合があります。
このため、“工程の設計・開発”については、要求事項をどのように適用するか、検討が必要でしょう。
ポイントは、顧客視点から見て、『それらの要求事項を適用しなくても、自社のQMSが提供する製品及び
サービスの適合並びに顧客満足の向上を確実にする組織の能力又は責任に影響を及ぼすことがないこと。』
ではないでしょうか。
無理矢理に“8.3.2 設計・開発の計画”の要求事項全てについて計画する必要は無く、
サービス品質実現上必要な範囲で規格要求事項に適合していれば良いと思われます。
【ISO9001の改正についての過去記事】
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2018/03/26
ISO45001:2017について 第4回 「5 リーダーシップ及び働く人の参加」
こんにちは、ISOコム マネジメントコンサルタントの小川 次郎です。
このブログにアクセスしていただき、ありがとうございます。
前回は、ISO45001「4 組織及びその状況」についてお話させていただきましたが、
今回は、「5 リーダーシップ及び働く人の参加」についてです。
トップのするべきこと、働く人のするべきこと
「5 リーダーシップ及び働く人の参加」は、すなわち“組織のトップのするべきこと”と“働く人のするべきこと”についてです。
組織はトップが旗を振らないと組織は動きません。
また、それだけでは上手く行きません。それには働く人の積極的な協力も必要ですね。
この項では、このあたりの必要事項が、少し難しい言い回しで書かれています。
ISO45001のこの項には次の4つの項目があります。
5.1リーダーシップ及びコミットメント
5.2 労働安全衛生方針
5.3 組織の役割、責任および権限
5.4 働く人の協議及び参加
分かり易く言いますと、
貴方が部下を十数名持たされて、あるプロジェクトのリーダーを任されたとします。
当然、貴方は、プロジェクトの目指すものを決め、部下を集めて、その内容を理解させ、責任と役割、権限を決め、プロジェクトを成功させるための意見を部下に求め、それを参考に決断し、ゴー指令を出しますね。
もちろんプロジェクトに対する説明責任だけでなく全責任を求められますね。
この上記のプロジェクトの内容には、ISO45001の5.1~5.4の4つの項目が含まれていることがわかりますね。
・・・説明責任だけでなく全責任を・・⇒5.1リーダーシップ及びコミットメント
・・・プロジェクトの目指すもの・・・⇒5.2 労働安全衛生方針
・・・責任と役割、権限を決め・・・・⇒5.3 組織の役割、責任および権限
・・・意見を部下に求め・・・・・・・⇒5.4 働く人の協議及び参加
もちろんISO45001は労働安全衛生に関するシステムなので、当然、これら4項目とも労働安全衛生についてのことですよ。
ポイントを記述すると次のようなことかな
ISO45001【5.1リーダーシップ及びコミットメント】
★「OH&Sマネジメントシステムが成功するため」及び「意図した成果」を達成するためには
トップマネジメントの認識、対応、積極的なサポート及びフィードバックを含めたリーダーシップとコミットメントが不可欠です。
注)「意図した成果」:第2回のブログに記載(「働く人の労働に関係する負傷及び疾病を
防止すること、及び安全で健康的な職場を提供すること」)
★OH&Sマネジメントシステムを支える文化(価値観、姿勢、管理の習慣、認識等)は、
トップマネジメントによって概ね決定されるものでです(組織の文化はトップマネジメントの
影響力が大きい)。
ISO45001【5.2 労働安全衛生方針】
★方針は文書化要求があるので、明文化しておく必要があります。
★方針は、組織内への伝達、利害関係者が入手可能、妥当性かつ適切性が求められています。
★方針の一貫性から考えると、他の方針(経営方針、品質方針、環境方針等)との調整をする
必要があります。
ISO45001【5.3 組織の役割、責任および権限】
★組織の役割、責任および権限も文書化を要求されています。
★管理責任者任命要求はありません(共通テキスト“付属書SL”の考え方:管理責任者に責任が
集中することが「システムの有効な運用にならない
ISO45001【5.4 働く人の協議及び参加】
★働く人(代表を含む)とディスカッションすること(協議及び参加)が、
OH&Sマネジメントシステムの重要な成功要因です。
★この項は、ディスカッション(協議は対話)すなわち、双方向のコミュニケーション
(対話の遣り取り等)を意味しています。
どうです。「5 リーダーシップ及び働く人の参加」について、少しは理解できましたか?
このように考えると、難しくはないですよね。
次回は「6.計画」についてです。
この項は、このシステムの根幹にかかわるところであり、考え方は難しくはないですが、
具現化するには、少しエネルギーが必要ですね。数回に渡って記述していこうと思います。
楽しみにしておいてください。
【ISO45001についての記事】
【第1回】 ISO45001:2017の発行の動向と既存のシステムとの大きな変化
【第7回】「6 計画」「6.2 OH&S目標及びそれを達成するための計画策定」
【第8回】「7 計画」 「7.1 資源」「7.2 力量」「7.3 認識」
【第9回】「7 計画」 「7.4 コミュニケーション」「7.5 文書化した情報」
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2018/03/19
【製品及びサービスに関する要求事項 ISO9001 2015年版】
今回は、8.2についてです。
ISO9001 2008年版に比べ、順番が変更になっています。
ISO9001 2008年版では、コミュニケーションは要求事項の明確化、レビューの後に規定されていました。
通常、業務の流れとしては、顧客とのコミュニケーション、引合い、ネゴシーションなどを経て、
要求事項の明確化、そのレビューへと繋がっていくことが多いので、ISO9001 2015年版(改正/改訂)では
その流れに沿った順番となりました。
8.2.1 は“顧客とのコミュニケーション”となっています。
a)、b)については、営業部門が窓口になる場合が多いと思われますが、c)、d)、e)については、
営業部門以外が窓口になる場合があります。
このため、7.4のコミュニケーションの要求事項を満たしておくことが求められます。
すなわち、内容によってどの部門または誰が窓口になるのか、どのような方法でコミュニケーションを
とるのか、等々について取り決めがあることが望まれます。
8.2.2 では、製品またはサービスに関連する要求事項の明確化が要求されています。
規定の内容を読めば分りますが、ここではお客様からの要求事項ではなく、自らが定めた要求事項に
ついてされています。
すなわち、ここでは基本的には、[B to C]で提供する製品及びサービスに対する要求事項であることが
想定されています。
また、[B to B]であっても、カタログ販売やオンライン販売などは、この要求事項で対応できる
ケースがあります。
これらの製品については、顧客のニーズ、世の中のトレンドや情勢、コンペティターの動向等を
調査・分析し、どのような製品・サービスを提供していくかを計画します。
このような製品・サービスを計画する場合に、合わせて検討すべき事項を規定していると考えられます。
すなわち、どんな製品が提供できるのか、どのようなサービスが提供できるのかを明確にすることが
求められています。
この内容から、この要求事項に対応するのは必ずしも営業部門だけではなく、企画部門、設計部門、
製造またはサービス提供部門などが想定されます。
これに対し、8.2.3 では、お客様からの具体的な要求事項についての対応が規定されています。
[B to B]であれ、[B to C]であれ、個別具体的にお客様の要求を確認したうえで製品またはサービスを
提供する場合の要求です。
具体的には以下の要求事項について、レビューすることが求められています。
・お客様が提示した、明示または黙示の要求事項。
・組織自体が付加する要求事項(顧客要求事項に対する制限、または追加要求事項)。
・法令・規制要求事項。
このレビューについては営業部門だけでなく、設計部門、調達部門、製造部門とのインターフェースが
必要となってくる場合があります。
なお、規格では“製品及びサービスを顧客に提供することをコミットメントする前”にレビューすることが
求められていますが、受注後、作業の進行と共に要求事項が明確になるケースは多々あります。
このような流れが要求事項に適合しないとの指摘があるのであれば、“コミットする前のレビュー”については
『適用不可能』とすべきでしょう。
なお、カタログ販売やオンライン販売でも、商品をカスタマイズして販売する場合には、顧客要求事項を
反映する必要がありますので、8.2.3 が適用されます。
余談ですが、『顧客がその要求事項を書面で示さない場合には、組織は、顧客要求事項を受諾する前に
確認しなければならない。』との要求事項は、飲食店では徹底されています。
例えば、一人でうどん屋へ行ってキツネを注文すると『ご注文を繰り返します。キツネうどん1杯で
間違いございませんか。』と聞かれるのがその典型である。
複数の品を注文した場合はともかく、たかがキツネ1杯の注文をわざわざ繰り返す必要があるのか、と
何時も疑問を感じています。
なお、8.2.4 で要求事項の変更が規定されていますが、もともとは要求事項のレビューと一緒に
記載されていましたが、単独の条項として強調されています。
【ISO9001の改正についての過去記事】
ISO9001の認証取得支援・運用更新代行
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2018/03/05