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ISO9001における資源とは?

投稿日:2025年12月9日  最終更新日:2025年12月8日

 

 

みなさんこんにちは!ISOコム株式会社 芝田 有輝です。

今日は、ISO9001における資源とは?について、お話ししてみたいと思います。

 

結論

 

ISO9001でいう「資源」とは、単なる“人や設備”のことではなく、品質を安定してつくり続けるために必要なすべての力(リソース) のことです。


具体的には、次の9つが含まれます。

  1. 人員:必要な人数・役割が確保されているか
  2. インフラ:設備・建物・ITが適切に維持されているか
  3. 作業環境:安全・快適・心理的に健全な環境か
  4. 監視測定資源:測定機器が正しく管理されているか
  5. 組織の知識:会社の経験・ノウハウが「属人化」せず残っているか
  6. 力量:人が必要なスキル・教育を備えているか
  7. 認識:従業員が品質方針や自分の役割を理解しているか
  8. コミュニケーション:必要な情報が正しく伝わっているか
  9. 文書化した情報:手順書・記録が正しく管理されているか

 

これらが適切に整備されることで、品質の再現性が高まり、ミス・不良・クレームの低減につながります。

 

本記事では、ISO9001の“資源”を初心者の方にもわかりやすく、1つずつ丁寧に解説します。

 

はじめに:ISO9001における“資源”とは?

 

ISO9001を初めて学ぶ方にとって、「資源」という言葉は少し抽象的に聞こえるかもしれません。

一般的には、人・設備・材料・エネルギーなどをイメージすると思います。

 

しかしISO9001では、単なる“モノや人”のことではなく、品質マネジメントシステム(QMS)を安定して運用し、良い製品・サービスを提供し続けるために必要な要素すべてを「資源」として扱います。

つまり、会社が品質を守り、改善を続けるための“力の源”といえるものです。

ISO9001の7章「支援」では、必要な資源を準備し、整備し、維持することを求めています。

 

具体的には、必要な人員、設備、作業環境、測定機器、知識のほか、人の力量、認識、コミュニケーション、文書管理など、品質を支える9つの資源が挙げられています。

これらを過不足なく整えることが、品質の安定、生産性向上、不良削減の土台となります。本記事では、それぞれの資源の意味を解説していきます。

 

資源が重要な理由(品質・納期・クレーム減に直結)

ISO9001が資源の整備を強く求める理由は、品質の安定と再現性が“資源の状態”に大きく左右されるからです。

たとえば必要な人員が不足すれば、検査漏れや作業ミスが発生しやすくなり、不良品の流出につながります。

設備が老朽化していたり、メンテナンスが不十分であれば、想定外の停止や誤作動が起こり、生産計画や納期に影響します。

また、作業環境が整っていないと、作業者の集中力や健康状態が低下し、品質トラブルの要因になることもあります。

 

さらに、測定機器の不備は品質保証に最も深刻な影響を与えます。

誤った測定値に基づいて合否判定を行ってしまうと、不良品の混入や過剰品質の発生を招きます。

 

また、知識が属人化していると、担当者が退職した際にノウハウが失われ、現場の作業レベルが大きく落ちてしまうことがあります。

つまり、資源とは“会社の品質を支える土台”。

資源が整っていなければ、いくらルールや手順を整えても品質保証は機能せず、納期遅延・クレーム・無駄なコストの増加につながります。ISO9001はその根本原因にアプローチし、必要な資源を揃えて管理することで、組織全体の品質力を高めることを目的にしています。

 

ISO9001「資源」全体像(7章の位置づけ)

ISO9001の7章「支援」は、品質マネジメントシステムを円滑に動かすための“土台づくり”を担う部分です。

プロセスアプローチやPDCAサイクルを回すためには、現場や管理部門が適切に機能できる状態を整える必要があります。

その中心にあるのが「資源の提供」と「維持管理」です。

7章では、必要な人員、設備・建物などのインフラ、作業環境、測定機器、組織としての知識など、品質を支える重要な項目が網羅されています。

 

さらに、教育による力量の確保、従業員の認識浸透、的確なコミュニケーション、文書化した情報の管理など、組織として当たり前に見える要素も“資源”として扱い、その健全性を要求します。

つまり7章は、品質の結果を生むための「インプット」を整える章。

設備が整っているか、人は育っているか、環境は適切か、情報は伝わっているか——。
これらが欠けると、どれだけ手順を整えても品質は安定しません。ISO9001は資源を体系的に管理することで、再現性の高い品質を実現する仕組みになっています。

 

人員(7.1.2):必要な人が揃っているか?

人員は、ISO9001における資源の中でも最も重要な要素の一つです。

どれほど設備が最新で、手順書が整備されていても、作業を行う「人」が不足していたり、適切に配置されていなければ、品質は安定しません。

ISO9001は、組織がプロセスを適切に運用し、製品・サービスの品質を確保するために、必要な人員を明確にし、確保することを求めています。

ここでいう「人員」とは、正社員・パート・アルバイト・派遣社員など、雇用形態を問いません。

機械操作、検査、管理、品質保証、顧客対応など、それぞれのプロセスに必要な人数を把握し、業務に支障が出ない体制を整えることが重要です。また、突発休暇や繁忙期にも対応できるよう、代替要員や多能工化も考慮すべきポイントです。

さらに、人数だけでなく“適材適所”であるかも重要です。

品質に直結する業務に未経験者を配置する、忙しいからといって検査工程を一人に任せすぎる——こうした状況はリスクを生みます。

 

ISO9001が求めるのは、人数の確保だけでなく、品質を守るためのバランスの取れた人員配置なのです。

 

インフラ(7.1.3):設備・建物・ITが整っているか?

ISO9001における「インフラ」は、品質をつくり出すための“設備・建物・IT環境”すべてを指します。設備や機械が古いまま放置されていたり、必要なメンテナンスが実施されない状態では、製品の精度が安定せず、突発的な故障が発生して生産が止まるリスクがあります。

また、建物そのものが老朽化し空調や照明が不十分であると、作業者のパフォーマンスも低下します。

さらに現代では、ITシステム(ソフトウェア、クラウド、ネットワーク環境)もインフラの一部であり、これらが不安定だとデータ管理や生産管理に支障をきたします。

ISO9001は、製品・サービスの適合を達成するために必要なインフラを特定し、整備し、維持することを求めています。

 

つまり、設備が適切に動く・必要な情報が処理できる・作業場所が安全であるといった“当たり前の状態”を確実に維持することが、品質を支える重要な要素なのです。

 

作業環境(7.1.4):良い製品を作る“環境”が整っているか?

品質は設備や手順だけでなく、“作業者が働く環境”の状態に大きく左右されます。

ISO9001では「作業環境」を、気温や湿度・照度・衛生状態などの物理的条件だけでなく、ストレス・心理状態・チームの雰囲気といった心理的・社会的要因まで含めた広い概念として扱っています。

たとえば、照度不足の作業場では検査ミスが起きやすくなりますし、騒音が大きすぎる環境では集中力が低下します。

逆に、温度や湿度が適切で、清潔で整った職場は作業者のパフォーマンスを引き出し、品質トラブルの予防につながります。

心理面でも、過剰なストレスや人間関係の悪化は作業精度を下げる要因となります。

ミスを責める風土があると、萎縮する余り、不良やミス、トラブル等の報告が遅れたり、本当のことを言ってくれなかったりして、不具合が拡大することもあります。

 

ISO9001が求めるのは、製品・サービスの適合に必要な作業環境を特定し、整備し、維持することです。

つまり職場の“当たり前”を見直し、製品の良し悪しだけでなく、作業者が安全・安心に働ける環境を組織としてつくることが、品質向上に直結するという考え方です。

 

監視測定資源(7.1.5):測定結果は正しいか?

ISO9001における「監視測定資源」とは、製品やサービスが要求どおりであることを確認するために使用する 測定機器・検査装置・ソフトウェアなど、測定に関わるすべての資源 を指します。

品質保証において最も重要なのは、「測定結果が正しいこと」です。

もし誤った測定値に基づいて合否判定を行えば、不良品の流出や過剰な手直し、コスト増大など重大な品質事故につながります。

 

そのためISO9001は、組織が使用する測定資源について、

①測定の目的に適しているか

②正しい値を示す状態に維持されているか

③信頼性を保証できるよう管理されているか

の3点を明確に求めています。

特に重要なのが、校正や検証の実施と、その記録の保持 です。

計測機器は時間の経過や使用状況によって誤差が生じるため、定期的に校正を行い、国家標準・国際標準につながる計量標準にトレーサブルであることを確認する必要があります。

標準が存在しない場合は、使用した基準や方法を文書化しておくことが求められます。

 

さらに、校正後の状態を識別できるようにラベルを貼る、機器の破損・調整ミスを防ぐため適切に保管する、誤使用が起きないよう管理するなどの運用も重要です。

万が一、校正不良や機器の異常が見つかった場合には、過去に合格と判断して出荷したり、リリースしたりした製品・サービスが、実は不合格だった可能性があります。

過去の測定結果に影響がないかを評価し、必要な処置を行う必要があります。

監視測定資源は品質保証の“最後の砦”です。

測定の信頼性が確保されて初めて、お客様に安心して提供できる品質が保証されるのです。

 

組織の知識(7.1.6):会社に蓄積されるべき“知的資産”

ISO9001では、「組織の知識」を企業が保持すべき重要な資源としています。

これは、単に文書やマニュアルに書かれた情報だけでなく、ベテラン社員が持つ経験、過去の成功や失敗から得た教訓、顧客対応で培ったノウハウなど、“会社に蓄積されている知的資産”全体を指します。

もし知識が属人化していると、担当者が休職・退職した瞬間に品質レベルが低下したり、同じミスが繰り返されたりといった問題が生じます。そのためISO9001は、必要な知識を特定し、維持し、必要なときに活用できる状態にしておくことを求めています。

さらに、技術・市場・顧客要求が変化する中で、組織は常に新しい知識を取り込み、最新化する必要があります。

これは、外部の標準(規格)、顧客からの情報、学会や展示会、業界動向、専門家の知見など、多様なルートから得られるものです。内部の知識と外部の情報を適切に組み合わせることで、品質改善や新商品開発にもつながります。

 

組織の知識を“見える化”し、共有し、更新し続けることこそ、安定した品質と継続的成長を支える重要な要素なのです。

 

力量(7.2):スキル・教育の適正化

ISO9001における「力量」とは、単に資格や経験の有無ではなく、業務を適切に実行できる知識・技能・経験の総合力を指します。

どれだけ設備や環境が整っていても、作業を行う人の力量が不足していると、品質トラブルや安全事故の原因となります。

そのためISO9001では、まず業務ごとに必要な力量を明確にし、担当者がその力量を備えていることを確認するプロセスを求めています。

力量不足が見つかった場合には、教育・訓練・OJT・指導・配置転換などの適切な対策を取り、その効果を評価することも重要です。

また、力量の証拠として資格証のコピーや教育記録を残すことも求められています。

これにより、担当者の能力が客観的に確認でき、監査・審査でも適切な説明が可能になります。

力量管理は「人の品質」を保証し、組織全体の安定した業務遂行に直結する重要な資源です。

 

認識(7.3):従業員が理解すべき4つのこと

ISO9001では、従業員が「知らなかった」「聞いていない」とならないよう、全員が共通して理解すべき4つの認識を挙げています。

それは、

①品質方針

②自分に関係する品質目標

③自らの行動がQMSにどのように貢献しているか

④不適合が与える影響の4つです。

 

例えば、検査員が自分の役割の重要性を理解していなければ、見逃しや妥協が起き、品質事故につながります。

また現場作業者が不適合の重大性を知らないと、報告が遅れ、問題が拡大する可能性があります。

認識浸透は、掲示物、朝礼、ミーティング、教育など、現場に合った方法で継続的に行うことが重要です。全員が「なぜこの仕事をするのか」を理解している組織は、品質トラブルが起きにくく、改善活動にも積極的に取り組めるようになります。

 

コミュニケーション(7.4):情報が正しく伝わるしくみ

品質を支えるためには、正しい情報が正しい相手に、正しいタイミングで伝わる仕組みが欠かせません。

ISO9001は、QMSに関するコミュニケーションについて、

①何を伝えるか(内容)

②いつ伝えるか(タイミング)

③誰に伝えるか(対象)

④どの方法で伝えるか(手段)

⑤誰が伝達するか(責任者)

を明確に決めることを要求しています。

情報が正しく伝わらないと、注文仕様の誤解、工程変更の未周知、顧客要求の伝達漏れなど、品質に直結するトラブルが発生します。

 

社内では会議、掲示、メール、チャット、教育など、業務に適した方法を組み合わせることが重要です。

また外部に対しては、顧客・協力会社との仕様確認、変更点の共有、問い合わせ対応など、明確な手順が求められます。

コミュニケーションは「品質を守るための情報インフラ」であり、組織全体で整備する必要があります。

 

文書化した情報(7.5):必要な文書と記録の“管理方法”

ISO9001では、QMSの運用に必要な文書や記録を「文書化した情報」と総称し、その適切な管理を求めています。

文書化した情報には、手順書・規程・マニュアルなどの“文書”と、検査記録・教育記録・校正記録などの“記録”が含まれます。

これらは品質の再現性を保つための重要な資源です。

作成・更新の際には、タイトル・日付・版数などの識別、媒体(紙・電子)、レビュー・承認が適切であることが必要です。

また、管理では、利用できる状態で保管されていること、機密性や改ざん防止が確保されていること、版管理が行われていること、保存期間が定められ適切に廃棄されることなどが求められます。

 

さらに、外部から入手する文書(規格、顧客仕様書、法令など)についても、必要に応じて識別・管理することが必要です。

文書化した情報の管理が不十分だと、旧版手順書で作業してしまう、記録がなく審査で説明できないといったトラブルが発生します。

確実な文書管理は、品質を守る“組織の公式記憶”として重要な役割を果たします。

 

まとめ:資源の整備=品質の再現性を高める“仕組みづくり”

ISO9001が求める「資源」とは、単なる人や設備だけではなく、作業環境、測定機器、知識、人の力量、認識、コミュニケーション、文書化した情報など、品質を支える要素すべてです。

これらがバランスよく整備されていることで、組織は安定した品質を実現し、トラブルを未然に防ぎ、改善を続けることができます。

資源を整えることは、単なる準備ではなく、**品質の再現性を高めるための“仕組みづくり”**そのものです。

会社の強みを伸ばし、弱点を補い、継続的に成長していくために、ISO9001の資源要求を自社に合わせて整備することが重要です。

 

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