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ISO運用で役立つ!タートル図の書き方と具体例を徹底解説

投稿日:2026年5月22日  最終更新日:2026年5月22日

ISO運用で役立つタートル図の書き方

ISOの導入や運用において「プロセスアプローチ」の理解に悩んでいませんか。

その解決策として非常に有効なのが、業務全体を可視化できる「タートル図」の活用です。

今回は、タートル図の基本的な構造から、ISO審査で評価される具体的な書き方、部門別の事例までをコンサルタントがわかりやすく詳細に解説します。

 

タートル図とは?ISO審査や業務改善で注目される理由

ISOマネジメントシステムを運用する上で、多くの組織が直面する課題が「プロセスアプローチ」の具現化です。

プロセスアプローチとは、業務を単なる作業の羅列としてではなく、インプットをアウトプットに変換する一連の「プロセス(過程)」として捉え、それらを相互に関連付けて管理する手法です。

この概念を視覚的に、かつ漏れなく整理するためのフレームワークが「タートル図」です。

 

タートル図は、その名の通り「亀(タートル)」の形に似ていることからそう呼ばれています。

もともとは自動車産業向けの非常に厳しい品質規格である「IATF 16949」の審査において、プロセスが適切に管理されているかを評価するために普及しました。

しかし現在では、その有用性が認められ、ISO 9001(品質)やISO 14001(環境)、ISO 45001(労働安全衛生)など、あらゆるマネジメントシステムの運用において活用されています。

 

なぜタートル図がこれほどまでに重視されるのでしょうか。

それは、従来の「業務フロー図(手順)」だけでは見えにくい経営資源や評価指標を1枚の図に集約できるからです。

単に「次は何をするか」という手順だけでは、その業務を遂行するために「誰が必要か」「どんな設備が必要か」「何を目指すべきか」という重要な周辺要素が抜け落ちてしまいます。

タートル図は、これらの要素を「亀の頭・尻尾・胴体・4本の足」に当てはめて整理することで、業務の完全な可視化を実現します。

 

フローチャート(業務フロー図)との明確な違い

業務を整理するツールとして代表的な「フローチャート」と「タートル図」には、明確な役割の違いがあります。

 

フローチャートの役割:業務の時間的な流れや手順をステップバイステップで示すことに特化しています。「Aの次にBをする」という時系列の理解に適しています。

タートル図の役割:特定のプロセス(業務)が成立するための「構造」を示すことに特化しています。「この業務を行うためには何が必要か、どう評価するか」という周辺要素を網羅するのに適しています。

 

ISOの審査では、手順だけでなく「プロセスを支えるインフラや能力が適切か」が問われます。

そのため、フローチャートで全体の流れを把握し、重要な工程についてはタートル図で深掘りするという併用方法が、最も審査員からの評価が高く、かつ実務的な改善に繋がりやすいアプローチとなります。

 

ISO(品質マネジメントシステム)においてタートル図が果たす役割

ISO規格、特にISO 9001:2015年版において、タートル図の作成は要求事項を効率的に満たすための「最短ルート」といえます。

具体的にどのような要求事項と関連しているのかを整理します。

 

ISO 9001箇条4.4「品質マネジメントシステム及びそのプロセス」への対応

ISO 9001の箇条4.4では、組織に対して以下の事項を決定することを求めています。

・プロセスに必要なインプットと、期待されるアウトプット

・プロセスの順序および相互作用

・プロセスの運用管理に必要な基準と方法(評価指標など)

・プロセスに必要な資源の利用可能性(設備や人など)

・プロセスに関する責任および権限の割り当て

・プロセスに伴うリスクと機会への取り組み

 

これらの要求項目は、後述するタートル図の構成要素(頭、尻尾、4本の足、胴体)と一対一で対応しています。

つまり、主要プロセスについてタートル図を作成し、それを維持・管理していること自体が、規格への適合を示す強力なエビデンス(証拠)となります。

 

リスクと機会の特定を論理的に行う

近年のISO規格で重要視されている「リスクに基づく思考」においても、タートル図は威力を発揮します。

漠然と「業務のリスクを考えてください」と言われても、現場では具体的な意見が出にくいものです。

タートル図があれば、「インプットが不完全なリスクは?」「設備の老朽化というリスクは?」「担当者の技能不足というリスクは?」というように、各要素(部位)に焦点を当ててリスクを抽出できます。

これにより、漏れのない体系的なリスクマネジメントが可能になります。

 

内部監査の質を劇的に向上させる

内部監査が「書類の有無を確認するだけ」の形骸化した作業になっていませんか。

タートル図を監査のチェックリストとして活用することで、本来あるべき「プロセス監査」が可能になります。

監査員は、タートル図を見ながら「このアウトプット(成果)を出すために、この設備(資源)は有効に機能していますか?」といった、本質的な改善に繋がる質問ができるようになります。

 

タートル図を構成する6つの要素(亀の部位)の詳細解説

タートル図を正しく作成するためには、6つの部位それぞれの定義を正確に理解する必要があります。

ここではISOの要求事項と関連付けながら詳しく説明します。

 

1. 胴体:プロセス(活動内容)

亀の中心、最も大きな胴体部分には「何をするプロセスか」という名称を記載します。

記載のポイント:単に「製造」とするのではなく、「製品Aの切削および組み立てプロセス」のように、範囲を明確にします。ここでは「インプットをアウトプットに変換する活動そのもの」を指します。

 

2. 頭:インプット(投入されるもの)

プロセスを開始するために「何が必要か」を記載します。これが揃わないとプロセスは動き出せません。

記載のポイント:顧客からの注文情報、設計図面、原材料、前工程からの仕掛品、仕様書などが該当します。単なる「モノ」だけでなく、「情報」も重要なインプットであることを忘れてはいけません。

 

3. 尻尾:アウトプット(生み出されるもの)

プロセスの結果として、最終的に「何が出てくるか」を記載します。

記載のポイント:完成した製品、出荷書類、検査記録、廃棄物(負のアウトプット)などが含まれます。期待されるアウトプットが、次の工程のインプットになるという連鎖(相互作用)を意識することが重要です。

 

4. 左前足:誰が?(人材・力量)

そのプロセスを実行するために「どんな人」が必要で、その人に「どんな能力(力量)」が求められるかを記載します。

記載のポイント:単に「営業部」と書くのではなく、「製品知識教育を修了した担当者」「フォークリフト運転資格者」「TOEIC 700点以上の交渉担当」といったように、ISO 9001箇条7.2(力量)に直結する具体的な条件を記載します。

 

5. 左後ろ足:何を使って?(インフラ・設備)

プロセスを実行するために必要な「モノ」の資源を記載します。

記載のポイント:製造機械、測定機器、パソコン、特定のITシステム、車両、クリーンルームのような作業環境などが該当します。これはISO 9001箇条7.1.3(インフラストラクチャ)および7.1.4(プロセスの運用環境)の管理対象となります。

 

6. 右前足:どのように?(手順・方法・ルール)

プロセスを正しく、バラツキなく実行するための「ルール」を記載します。

記載のポイント:作業手順書、品質マニュアル、業界団体が定めるガイドライン、準拠すべき法律(薬機法や建設業法など)を明記します。これがISO 9001箇条7.5(文書化した情報)に基づく運用管理の根拠となります。

 

7. 右後ろ足:どのくらい?(パフォーマンス指標・KPI)

そのプロセスがうまくいったかどうかを「どうやって測るか」を記載します。

記載のポイント:不良率、納期遵守率、売上目標達成度、顧客満足度スコア、作業時間など、可能な限り数値化できる指標(KPI)を設定します。これがないと、ISOの基本である「継続的改善(PDCA)」を回すことができません。

 

タートル図の書き方:7つのステップで完成させる手順

いきなり完璧な図を書こうとする必要はありません。以下のステップに従って、関係者と対話しながら進めるのが成功のコツです。

 

ステップ1:プロセスの範囲を決定する

まずは「どこからどこまでを一つのタートル図にするか」を決めます。細かすぎると管理が煩雑になるため、部門単位や主要な機能単位(例:設計開発、購買、製造)で区切るのが一般的です。

 

ステップ2:インプットとアウトプットを定義する(頭と尻尾)

その業務が「何を受けて始まり」「何を渡して終わるか」を明確にします。これがプロセスの境界線になります。

 

ステップ3:必要な資源(何を使って)を洗い出す(左後ろ足)

現場を見渡し、使用しているツール、システム、設備をすべて書き出します。点検や校正が必要なものは特に重要です。

 

ステップ4:必要な人材と力量(誰が)を特定する(左前足)

その業務を遂行する責任者と、実際に作業する人に必要な「スキル」を明確にします。資格が必要な業務は漏れなく記載します。

 

ステップ5:手順書やルール(どのように)を整理する(右前足)

現在使用している手順書や、守らなければならない法律を確認します。もし手順書がない場合は、ここで作成の必要性が明らかになります。

 

ステップ6:評価指標(どのくらい)を設定する(右後ろ足)

プロセスの健全性を測るための数字を決めます。前年度の実績や経営目標を参考に、達成可能な数値を設定します。

 

ステップ7:全体を見直し、リスクを検討する

完成した図を俯瞰し、要素間の矛盾がないか確認します。最後に、「これらの要素のどこかに欠陥があった場合、どんなトラブル(リスク)が起きるか」を議論し、対策に繋げます。

 

【部門別】タートル図の具体例

ここでは、よりイメージを具体化するために、製造、営業、購買の3つの代表的なプロセスにおけるタートル図の具体例を紹介します。

 

具体例1:製造部門(製品Aの組み立てプロセス)

タートル図(製品Aの組立)

製造現場では、品質の安定と効率が最大のテーマとなります。資源とルールの整合性が重要です。

 

プロセス(胴体):製品Aの組み立て工程

インプット(頭):生産計画書、部品リスト、構成部品、受入検査記録

アウトプット(尻尾):完成品、作業日報、工程内検査記録

誰が(左前足):製造部門の組み立て担当者、社内認定資格保有者

何を使って(左後ろ足):電動ドライバー、専用治具、トルクレンチ、作業台

どのように(右前足):製品A組み立て作業標準書(版数管理)、異常発生連絡フロー

どのくらい(右後ろ足):時間あたりの生産個数、組み立て不良率(1%未満)、安全事故ゼロ

 

具体例2:営業部門(新規顧客への提案から受注契約プロセス)

新規顧客への提案から受注契約プロセス

営業活動は属人化しやすいため、タートル図で「誰が」「どのルールで」行うかを明確にするメリットが大きいです。

 

プロセス(胴体):新規顧客への提案から受注契約プロセス

インプット(頭):顧客からの引き合い情報、要求仕様、市場調査データ

アウトプット(尻尾):締結済みの契約書、社内への受注連絡表、要件定義書

誰が(左前足):営業担当者、法務担当者(契約審査)、セールスエンジニア(サービス熟知)

何を使って(左後ろ足):顧客管理システム(CRM)、見積作成システム、オンライン商談ツール、営業車両

どのように(右前足):営業マニュアル、見積書作成規定、契約審査手順書、与信管理規程

どのくらい(右後ろ足):月間受注目標達成率、提案からの成約率、見積提出までのリードタイム

 

具体例3:購買部門(新規サプライヤーの選定と発注プロセス)

新規サプライヤーの選定と発注プロセス

サプライチェーンのリスク管理が問われる現代、購買プロセスのタートル図は審査で重視される項目です。

 

プロセス(胴体):新規サプライヤーの評価および発注プロセス

インプット(頭):購買要求書、資材仕様書・図面

アウトプット(尻尾):サプライヤー評価記録、承認された発注書、基本取引契約書

誰が(左前足):購買部バイヤー、品質保証部担当者(品質監査)、価格交渉スキルを持つ担当者

何を使って(左後ろ足):購買管理システム、EDI(電子データ交換)システム

どのように(右前足):購買管理規程、供給者評価基準書、グリーン調達ガイドライン

どのくらい(右後ろ足):発注ミス件数、サプライヤー納期遅延率、コストダウン達成額

 

タートル図を運用する際の3つの注意点

タートル図を作成しても、それが形骸化してしまっては意味がありません。運用において特に注意すべき点を3つ挙げます。

 

1. 現場の実態を反映させる(「あるべき姿」だけにしない)

よくある失敗が、コンサルタントや事務局だけで図面を作ってしまうことです。

書類上の「理想のプロセス」と、現場の「実際の作業」が乖離していると、審査で不適合になるだけでなく、事故やミスの原因になります。

必ず現場担当者を交え、「実際にはどの手順書を見ているか」「本当にその設備を使っているか」を確認しながら作成してください。

 

2. 変化に合わせて定期的にアップデートする

新しいシステムを導入した、組織変更で役割が変わった、新しい法律が施行されたといった変化があったとき、タートル図も更新する必要があります。

少なくとも年に一度の内部監査の前には、タートル図が最新の状態かを確認するプロセスを設けるべきです。

ISO 9001箇条4.4では「プロセスの維持」だけでなく「プロセスの改善」も求められています。

 

3. すべての小作業をタートル図にしない

あまりにも細かな作業(例:伝票のコピー、メールの送信など)までタートル図にしようとすると、図面の数が数百枚に膨れ上がり、誰も管理できなくなります。

あくまで「品質に重大な影響を与える主要なプロセス」に絞って作成するのがコツです。

会社全体のプロセスを概観する「プロセス・マップ(相互作用図)」を先に作り、その中から重要なものを選定しましょう。

 

タートル図を活用した「攻め」の内部監査テクニック

タートル図を見て話合う二人

タートル図は、内部監査を「指摘の場」から「改善の場」へと変える力を持っています。

これまでの内部監査は、「この手順書の通りにやっていますか?」と聞き、相手が「はい」と答えて終わる、不毛なやり取りが多く見られました。

しかし、タートル図を使った監査は以下のように進化します。

 

監査員の質問例:
「右後ろ足にある『不良率2%以下』という目標は達成できていますか?」

現場の回答:
「残念ながら先月は3%になってしまいました。」

監査員の深掘り:
「タートル図の他の要素に原因がないか一緒に考えましょう。左後ろ足の設備に不具合はなかったですか?あるいは、右前足の手順書が分かりにくく、左前足の新人さんが理解しにくかったということはありませんか?」

 

このように、タートル図の各要素を「変数」として捉え、結果(アウトプット)に対する原因を論理的に探っていくことができます。

これが、ISOが本来求めている「プロセスの有効性の評価」です。

 

まとめ:タートル図でISOの運用をより効果的に

タートル図は、ISOの要求事項を整理するだけのツールではなく、業務のボトルネックを発見し、組織の力を最大化するための経営ツールです。

インプット、アウトプット、資源、手順、人、指標を一枚の図で見渡すことで、部署間の連携がスムーズになり、無駄なコストやリスクを削減することができます。

 

ISOの取得や更新はゴールではありません。

タートル図のようなフレームワークを使いこなし、日常の業務改善が自然に行われる仕組みを作ることこそが、真の目的です。

本記事を参考に、まずは自社の核となるプロセスからタートル図を作成してみてください。

これまで見えていなかった課題が、驚くほど明確に見えてくるはずです。

 

ISOの導入・運用に関するお悩みは「ISOコム」へ

タートル図の書き方を学んでも、「自社の複雑な工程にどう当てはめればいいのか」「審査で通用するレベルになっているか」といった不安は尽きないものです。

特に、初めてISOを導入される企業様や、長年の運用でマネジメントシステムが複雑化・形骸化してしまった企業様にとって、専門家のアドバイスは大きな助けとなります。

 

ISOコムでは、経験豊富なコンサルタントが多数在籍しており、お客様のビジネスに本当に役立つ「スリムで実務的なISO」の構築・運用を支援しています。

タートル図の作成指導はもちろん、現場の負担を最小限に抑えつつ、審査合格と業績向上を両立させるノウハウをご提供します。

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