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ISOコム通信

印鑑だらけ?ISOの形骸化を招く承認印はいらない

投稿日:2021年5月12日  最終更新日:2024年11月28日

こんにちは!ISOコムです。
今日は、印鑑とISOについて、特にISO9001を中心にお話ししてみたいと思います。

 

こんな質問がありました。

『ISOでは、上司の承認印をもらうことで業務が滞ることがあるようです。例えば、製造業における日常点検がきちんと出来ているかの承認印です。この場合、本当に承認印が必要なのかを教えてください。』

 

そこで、今回は承認印によって、ISOが形だけのものになっていないかについて、考えてみたいと思います。

では、早速いってみましょう!

 

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押印についての法令の動きとは?

デジタル庁創設を柱とした、デジタル改革関連5法案が2021年に成立しました。

・デジタル庁設置法

・デジタル社会形成基本法

・行政訴訟におけるオンライン化促進法

・情報通信技術(ICT)活用推進法

・個人情報保護法改正案

この中で、マイナンバーの利用拡大や、『はんこ』が必要な行政手続きの削減などが盛り込まれています。

 

既に、電子申告や電子入札のように紙に代わって電子データで提出できる書類が増えつつあります。

さらに“押印”についても見直しされるようになってきました。

 

会社の業務についても、“押印”の要否が検討される時代になってきたのではないでしょうか。

 

ISO規格における印鑑の必要性とは?

ISO9001の目的は、“要求を満たした製品やサービスを提供し続ける能力を実証して、保証し、顧客満足を上げること”です。

この目的の、“実証”のために文書や記録が、ポイントになります。

 

文書には、業務や作業の指示等の意味があるので、責任者が品質保証の観点から、その内容で問題ないか、確認が必要です。

文書の適切なとを確認したことを明らかにするため、従来は、確認し、発行を承認した責任者が押印をしていました。

 

ISOが印鑑によって形骸化する事例とは?

日本の会社には、稟議制度がありますね。

ある事案を関係者が協議して、会議で決定する代わりに、関連文書を回覧し、書類に押印してもらうことで、文書内容を承認、又は承知する手続きを指します。

 

こんな文化を持つことから、文書の発行についても、発行部署の責任者が押印するだけではなく、関連部署を回付し、関連部署の責任者が押印しているケースが見受けられます。

 

このやりかたでは、関係者が抜けなく確認される反面、全員の確認まで時間がかかりますね。

発行までに時間がない場合、担当者が押印者のところまで持っていって、説明して押印してもらうような余分な手続きが出てきます。

 

デジタル改革関連で成立した5つの法律でも、役所のこんな無駄な作業を減らした発想なんだと思いますね。

ただ、押印をなくしても手続き自体が変わらないと手間は減らないですよね。

そもそも、何人も確認してもらう必要があるかを、検討する必要があると思います。

 

多くの場合、一人の責任者が確認、承認して十分なケースが殆どかと思います。
複数人の確認が必要なら、関係者に同時配付し、個別に承認してもらうことで、時間短縮を図るなどの仕組みとすることが可能です。

 

さらに、配付速度のアップや配付された文書の同一性を担保するためには、電子データによる閲覧方式の採用などが、可能です。

 

ISOの要求はこれだけ!印鑑はいらない場合もある

ISO9001では、「7.5 文書化した情報」で、文書・記録に対する要求が書かれています。

文書については、『適切なレビュー及び承認』が求めています。

記録では、『意図しない改変から保護しなければならない』ことを求めています。

 

文書の発行は、発行部門の責任者が確認、承認すれば十分だと思います。

時々、文書の「審査」「承認」をしている会社がありますが、文書の審査は規格が求めているわけではありません。

 

責任者が承認したことが分かれば、押印の必要は無いと思います。記名でもOKです。

複数人の確認が必要な場合でも、確認されたことが分かる仕組みがあれば、押印は不要です。

 

■ISO規格では、記録の確認、承認の要求はありません。

そもそも、ですが、ISO9001などのマネジメントシステム規格に、記録を確認したり、承認したりしなければならない要求はありません。

 

記録を確認して、間違いに気づいたらどうしますか?

有るべき姿に書き換えるのでしょうか?

これは結構危険で、記録の改ざんの可能性がでてきますね。

誤記を修正する程度であれば、あり得ますが、業務の結果をかいた記録、入力したデータを書き換えるということは、あってはいけないことです。

 

ちょっと、今回のテーマから外れました、元に戻しましょう。

 

記録の確認や承認をどの程度行うか、又は行わないかについては、会社で決めて、実行すれば十分です。実行しないことも可能ですよ。

 

例えば、旋盤で加工する場合、作業者は、旋盤の異常で作業が失敗することを避けるため、使用前点検を実施するでしょう。
しかし、加工結果については、1個ずつ確認していれば、旋盤の作業前点検を、作業者に任せて問題ないと考えられます。

 

作業者も、不良品による手戻りを防ぐため、必要な範囲で、機械の使用前点検を実施するはずです。

しかし、自動機械による加工を行う場合、1回のセットで、数十個、数百個の製品について、加工を行います。

機械に不具合があれば、多数の不良品が発生する恐れがあるので、加工前に機械の状態を点検し、点検内容に漏れなどが無いかを確認するために、点検記録を作成することもあります。

 

審査で見た記録と押印(サイン)の例とは?

審査に行きますと、機械の使用前点検の記録に毎日担当者が押印し、更に上長が1週間又は1か月単位で押印しているのを見かけます。

 

この上長の押印は、担当者が毎日、押印していることを確認して、押印していますので、担当者記録用紙に押印忘れがないことの確認が、仕事となっています。
これって、本当に必要なのでしょうか。

 

必要なのは、担当者が毎朝実施している機械の点検の手順、判断が適切であることを、現場で確認することではないでしょうか。

特に、新人が担当している場合には、担当者が記録誌に押印した横に押印することにより、適切な作業ができていたことを立証する記録、となることが考えられます。

 

しかし、ベテラン社員については、確認だけで押印の必要は、ないように思われます。

欧米では、記録をしっかり残すことが習慣化されていますが、記録がしっかり作成されていることと、製品の品質が一致しないケースが見られます。

 

何のために記録が必要なのか、押印がどのような意味を持つか、検討してみてはいかがでしょうか。

 

いかがでしたか?

 

ISOのための文書や記録、意味のない確認承認している文書や記録

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