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ISO14001の著しい環境側面とは?わかりやすく解説

投稿日:2023年11月9日  最終更新日:2025年3月26日

ISO14001のコンサル風景

こんにちは。ISOコム株式会社の芝田有輝です。

今回は、ISO14001の「環境側面」の中でも特に重大な影響を及ぼす「著しい環境側面」について、できるだけ分かりやすく解説していきます。

ISO14001の環境マネジメントシステムに関わる方はもちろんのこと、ISOを初めて学ぶ方や、これから取得を検討している企業の方にも役立つ内容となっています。

では早速、いってみましょう!

ISO14001の環境側面とは?

環境側面とは、「企業や組織の活動の中で、環境に影響を及ぼす、またはその可能性がある要素」のことです。

例えば、工場で製品を作るときに 二酸化炭素(CO₂)が排出されること や 製造過程で廃棄物が出ること などが環境側面になります。

企業がどのように環境に影響を与えているのかを知ることで、適切な対策を考えることができます。

ここでは、「金属加工業」「食品製造業(食肉加工)」「建設業」「運送業」「産業廃棄物収集運搬業」の5つの業種について、インプット(投入されるもの)、アウトプット(排出されるもの)、環境側面(影響)を詳しく解説します。

1 金属加工業

金属を削ったり、溶接したりする作業が行われ、製品を作る過程でさまざまな環境影響が発生します。
金属加工業 表

2 食品製造業(食肉加工業)

原料となる食肉を処理・加工し、製品として包装・保存する作業を行います。加工の過程で水やエネルギーを大量に使用し、食品廃棄物が発生します。

3 建設業

建物の建設や解体、土木工事などを行う業界であり、大型の重機を使用しながら作業を進めます。

4 運送業

活動内容

トラックや輸送車両を使用し、物資の配送や物流業務を行います。

ISO14001の「著しい環境側面」とは?

では、その中でも特に「著しい環境側面」とは何でしょうか?
「著しい環境側面」とは、環境に与える影響が特に大きいと判断されたもののことです。

つまり、会社や工場が日々の活動の中で行う作業の中で、特に環境に大きな影響を与えるものを「著しい環境側面」として選び出し、重点的に管理していく必要があります。

例えば、工場が電力を大量に消費し、大量のCO₂を排出している場合、これは環境に大きな影響を与えると企業が判断すれば、「著しい環境側面」と判断されることがあります。

3.著しい環境側面を特定する基準

会社や工場がどの環境側面を「著しい」と判断するかは、それぞれの業種や活動内容によって異なりますが、一般的に以下のポイントを考慮します。

・影響の規模・深刻度   → どれだけ大きな影響を与えるか
・影響の継続期間     → 一時的か、それとも長期的な影響があるか
・環境規制や法律     → 法律で規制されているかどうか
・企業が管理できる範囲  → 企業が影響を減らすことができるか
・近隣住民や社会への影響 → 地域住民に影響を与えるか

これらの基準をもとに、企業は「著しい環境側面」を特定し、環境に与える影響をできるだけ小さくするための管理を行います。

4.業種ごとの著しい環境側面の具体例

ここでは、先ほど説明した4つの業種において、「著しい環境側面」になりやすいものを具体的に説明します。

金属加工業の例で考えてみましょう。

1 金属加工業

金属加工業 表

先ほどの表を元に考えてみましょう。
環境側面としては、上記の3つが挙がっています。
これを以下の基準で判断して、著しいと評価するものを決めます。

a)影響の規模・深刻度   → どれだけ大きな影響を与えるか
b)影響の継続期間     → 一時的か、それとも長期的な影響があるか
c)環境規制や法律     → 法律で規制されているかどうか
d)企業が管理できる範囲  → 企業が影響を減らすことができるか
e)近隣住民や社会への影響 → 地域住民に影響を与えるか

上記表の1~3全てを著しいと決めることもあるでしょうし、1つという場合もあるでしょう。最低1つは決める必要があります。

他の業種も同様です。表に記載したものは特に著しいと評価されやすいものですので、参考になれば幸いです。

5.著しい環境側面を決めた後どうするか

「著しい環境側面」を特定した後、それを適切に管理する必要があります。その方法には 「環境目標として管理する」場合と、「維持管理として管理する」場合の2種類があります。今回は「切削油・潤滑油の使用と、それによる廃油の発生」を例に、管理方法を解説します。

環境影響を管理する方法には、
1.「環境目標として管理する」(環境負荷を減らすための改善)
2.「維持管理として管理する」(現状を維持し続ける)
の2種類があります。

1.環境目標として管理する場合

具体例:切削油の使用量削減と廃油のリサイクル促進

これは、環境に与える影響を改善し、より良くしていくための方法です。今回で言うと、切削油の使用量が多く、環境への負荷を減らしたい場合等には、数値目標を決め、環境負荷を減らす取り組みを行います。

1)環境目標の設定
「1年間で切削油の使用量を20%削減する」
「廃油のリサイクル率を50%から70%に向上させる」

2)取り組み
・不良を20%減らす。
・ミスト潤滑(MQL:Minimum Quantity Lubrication)の導入し、切削油を霧状にして少量使用することで、消費量を削減
・高性能な油水分離装置の導入し、排油の再利用を可能にし、廃棄量を削減
・油の管理改善として、「必要な量だけ供給する」ための自動供給システムを導入し、ムダな油の使用を防ぐ
・従業員の教育(適切な油の使用・回収・リサイクルの方法をトレーニング)

2.維持管理として管理する場合

これは、すでに適切な管理ができており、維持することが重要な場合に、環境側面について、「悪化させないように継続的に管理する」方法です。

具体例:排油の適正処理の維持

維持管理の方法
・廃油を100%認定業者へ適正処理を依頼するルールを継続する。数年に一度、委託業者への監査(適正処理が実施されているか)の実施
・廃油の廃棄処理の記録(排油の発生量・回収量・処理方法)を毎月作成し、増加していないかを確認し、増加している場合には必要な対策をとる。

ISO14001では「環境負荷を減らす努力」と「適正な管理を継続すること」の両方が求められます。
企業の状況に応じて適切な管理方法を選び、持続可能な運営を行うことが大切ですね。

6. まとめ

いかがでしたか?

今回は、ISO14001における「著しい環境側面」について解説しました。

1)企業や工場が、環境に与える影響の中で特に大きいものを「著しい環境側面」として重点的に管理します。

2)決定基準は、影響の大きさや継続性、法規制の有無、管理可能性、社会への影響などです。

3)管理方法には、「環境目標として管理する」(例:切削油の使用量削減)と、「維持管理として管理する」(例:廃油の適正処理)の2種類があります。

4)企業は環境負荷を減らす努力と適切な管理を継続し、持続可能な運営を行うことが求められます。

ISO14001の認証取得を検討している企業の方は、ぜひ「著しい環境側面」の管理に注目してみてください。

ISO14001の取得や環境マネジメントの導入に関してお困りの方は、ぜひISOコム株式会社までご相談ください!

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