ISO14001活用事例
投稿日:2024年11月11日 最終更新日:2025年7月24日
こんにちは、ISOコム マネジメントコンサルタントの小川次郎です。
今回は “ISO14001活用事例”についてです。
ISO14001の認証取得は、受注や入札、親会社の要請など外部からの要求が動機となることが多いですが、単なる認証維持にとどまらず、経営戦略に積極的に活用することで、環境負荷の低減や競争力強化を実現している企業があります。
この記事では、建設業と製造・販売業の2つの事例とその他の業種の事例を通じて、ISO14001を活用して成果を上げた具体的な取り組みを紹介します。
環境法規制の順守や地域との関係強化、業務プロセスの改善にどう貢献するのか、ぜひご覧ください。
ISO14001の認証をとる動機
マネジメントシステムの認証をとる動機は、会社によっていろいろです。
多分、一番多いのは、
“仕事の受注に必要だから”
“行政申請に要求されているから”
“親会社の要請があるから”
“元請が要求するから“
等が多いのではないのでしょうか。
ISO9001やISO45001の場合は.純粋に品質管理のレベルを上げたい、ケガや事故を減らしたい、という場合もあるようですね。
ISO14001の場合は、受注や入札、お客様や親会社の要請などが多いですね。
そのような現状を踏まえて、ISO14001を上手く活用して、成果を上げている事例をご紹介したいと思います。
皆さんも分かっておられると思いますが、マネジメントシステムはあくまで“システム”なので、このシステムがうまく働くかどうかは、会社の利用の仕方にかかっています。
認証を“維持できれば良い”と考えるか、“会社の経営に積極的に活用していこう”と考えるかよって大きく変わります。
活用事例
以下、ISO14001を導入して成果が出ている事例を、列記してみました。
【事例】 建設業、従業員10名未満、元請が主体
この会社は、官庁関係の総合評価方式での発注工事を元請として受注していて、ISO認証による、競合他社に差をつける(現在ではマイナス評価を避ける)の確保が認証取得の理由でした。
しかしながら、実際にチャレンジしてみると、思わぬ効果があったと認識されている。
一つは、取組前は、管理文書が無かったが、チャレンジすることにより、責任や権限、作業手順、法令順守、教育訓練、緊急事態対応等の管理文書の整備ができた。
その他、以下のようなことが派生的にできるようになった。
1. 発注者からの環境保全の要求に応えられる。
昨今の公共発注者は地元とのトラブルや苦情を意識して、環境保全の要求が強い。
例えば、
・騒音振動の抑制
・水質汚濁の低減
・粉じんの抑制
・自然環境の保全
・防火体制を含む緊急時対応の体制整備(防災協定ほか)
このようなことを求めており、ISO14001の要求事項に取り組むことで、このような発注者からの環境保全の要求に応えられるようになってきた。
2. 近隣住民対応の方法、重要性の認識・意識が向上した。
ISO14001の要求事項に利害関係者(お客様、近隣、行政、協力会社、社員など)のニーズや期待の理解という要求事項があり、これらを意識することにより、近隣対応がさらによくなった。
3. 総合評価入札における技術提案の幅が広がった。
これは、直接ではなく、経験豊富な審査員との遣り取りの中で、技術提案の幅が広がってきたように感じている。
4. 工事評点の向上に役立った。
これは、ISO14001を実践することにより、工事評点の加点要素を自然に実践していけている。
5. 順守の必要な法令の理解が広がった。
これは、ISO14001の要求事項にあり、対応が足りなかったり、抜け落ちていたりすると、指摘となるので、自然と理解が広がってきた。
※この会社様は、このようなことを認識している会社ですが、例え意識していなくてもこのような成果は大なり小なり有るんです。
さあ、次は2例目です。
認証の動機は前述の通りなのかも分かりませんが、社長の意志で“会社の経営に積極的に活用していこう”というケースなので紹介したいと思います。
事例2 製造・販売業、従業員約50名
ここの組織は、国内と中国及びベトナムに工場を持ち、主として気体の制御機器及び資機材の設計及び製造・販売を手広く(取引先:国内約120社、国外約70社)行っています。
ここの特徴は、顧客の要望に応じて、自社製作品とアウトソーイングを上手く組み合わせて、小人数で上手く対応していることにあります。
ISO14001の特徴は、自社製品が主として環境対応(エネルギーロスへの対応、CO₂削減等)に利用されていることに着目し、自社の営業戦略上の行為を“環境目標”や“取組み事項”に掲げて取り組んでいるところです。
例えば、
- 顧客への提案(エネルギーロスの減少)等の営業行為
- 自社製品の環境良化のアピール(個人の力量アップも含めて)
- 各事業所ごとの売上、粗利を環境目標に掲げての運用
- 緊急事態(大きな災害)の発生時における、顧客情報の収集及び支援(検討中)
この事例は、見事に、業務プロセス(経営)とEMSプロセス(EMS運用)が一体となっていると思いませんか。
これは、社長が「自社製品が、環境良化に貢献している」との自信を持っているからできるのだと思います。
あなたの会社ではいかがですか?
“多少疑問?” “そこまで自信がないよな” という人もおられると思います。
しかし、考えてみてください。今の世の中
「節電」
「省エネルギー」
「排ガスのクリーン化」
「リサイクル、リユース、リデュース」
「廃棄物0化、最小化」
このような取組みをしていない製品やサービスがいくらコスト優先と言えども今の世の中に受け入れられるはずがありませんよね。
このように考えると、この組織のように“業務プロセス(経営)とEMSプロセス(EMS運用)の一体”が可能になると思いませんか。
もちろん、“認証を取得する”或いは“認証を維持していく”ことは、努力と時間が必要ですが、それを上回るメリットを感じませんか。
その他業種別ISO14001の活用事例
以下の事例は、ISO14001が環境負荷の低減、コスト削減、競争力強化、ブランド価値向上、地域社会との関係改善など、多岐にわたるメリットをもたらすことを示しています。
業界や規模に応じて取り組みは異なりますが、環境目標の設定と継続的改善が成功の鍵となります。
製造業での廃棄物削減
電子機器製造企業がISO14001を導入し、生産プロセスでの廃棄物管理を強化。リサイクル率を30%向上させ、廃棄物処理コストを年間で約20%削減。廃棄物処理法の順守を徹底し、環境法規制違反リスクを低減した。
建設業での環境配慮型工事
中規模建設会社がISO14001を活用し、工事現場での騒音・振動抑制や粉じん対策を体系化。近隣住民からの苦情が50%減少し、総合評価入札での加点要素を満たすことで受注率が10%向上した。
サービス業での省エネルギー推進
ホテルチェーンがISO14001を導入し、エネルギー管理を強化。照明のLED化や空調の効率化により、年間エネルギー消費量を15%削減。省エネ施策を顧客にアピールし、環境意識の高い顧客層からの予約が増加した。
食品製造業での環境対応製品開発
食品加工企業がISO14001を基盤に、環境負荷の低い包装材(バイオプラスチックなど)を採用。顧客の環境意識に応え、売上を5%増加させ、環境関連のマーケティングでブランド価値を向上させた。
グローバル製造業でのサプライチェーン管理
自動車部品製造企業がISO14001をグローバル工場に導入し、サプライヤーにも環境基準の順守を要求。CO2排出量をサプライチェーン全体で10%削減し、EUのREACH規制などの国際環境規制への対応力を強化した。
小売業でのグリーンマーケティング
大手スーパーマーケットがISO14001を活用し、店舗でのプラスチック使用量を削減(例: レジ袋の廃止、リサイクル可能な包装材の導入)。環境負荷低減をアピールしたキャンペーンにより、来店客数が8%増加した。
化学工業での水質汚濁防止
化学製品製造企業がISO14001に基づき、工場排水の管理を強化。排水処理プロセスの改善により、水質汚濁指標を20%改善し、近隣河川の環境保全に貢献。地域住民からの信頼も向上した。
IT企業でのデータセンターのエネルギー効率化
IT企業がISO14001を導入し、データセンターの電力消費を最適化。冷却システムの改良や再生可能エネルギーの導入により、エネルギーコストを12%削減。環境に配慮した企業イメージを確立し、投資家評価が向上した。
運輸業でのCO2排出削減
物流会社がISO14001を活用し、配送車両の燃費改善や電気トラックの導入を推進。CO2排出量を15%削減し、環境に配慮した物流サービスを顧客に提供することで、大手荷主からの契約が増加した。
教育機関での環境教育と施設管理
大学がISO14001を導入し、キャンパス内の廃棄物分別や省エネ施策を推進。学生向けの環境教育プログラムを強化し、ごみ分別率が40%向上。地域社会での環境リーダーシップを確立し、学生募集にも好影響を与えた。
まとめ
いかがでしたか?
ISO14001は単なる認証維持ではなく、経営戦略として活用することで、環境法規制の順守、コスト削減、顧客・地域との関係強化、競争力向上を実現します。
企業は環境トレンド(節電、省エネ、リサイクルなど)を活用し、業務とEMSを統合することで大きなメリットを得られることがわかっていただけたかと思います。
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