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ISOコム通信

ISO9001とISO14001を統合するべきか

投稿日:2018年12月3日  最終更新日:2024年12月8日

 【この記事の執筆者】柏木博

 

こんにちは。

ISOコム マネジメントコンサルタントの柏木 博です。

ISOコム通信にアクセスしていただき、ありがとうございます。

 

今回のテーマは“ISO9001とISO14001を統合・合併するべきか”です。

 

以前、弊社の芝田がこのテーマについて投稿していますが、私も一言投稿させていただきます。

相違点はあると思いますが、いろいろな意見があって良いと思いますので、お気軽に読んでいただけましたら幸いです。

 

ISO9001とISO14001の両方の認証を保有している企業においては、これらのマネジメントシステム(以下、MS)を統合すべきか、

否かについて検討されているようです。

 

ISO9001とISO14001を統合すべき場合とは?

統合すべきとの意見を見てみますと、以下のような意見が多いようです。

 

・ISO9001とISO14001で別々のマニュアルを作り、運用することは手間である。

・内部監査、マネジメントレビューを別々に実施し、第三者審査も別々に受審するのは手間である。

・共通する要求事項が多く、必要とされる帳票類、記録類も共通するものが多くあり、統合することにより簡略化が可能である。

 

ISO9001とISO14001を統合しない場合とは?

一方、多くはありませんが、統合合併に反対される意見もあります。

ISO9001とISO14001は、その目的も運用方法も異なることから、形だけ統合しても、

結局は別々に運用するのと何ら変わりが無い、というものです。

 

しかし、これらの意見は何れも“統合”の本質から外れた議論のように思われます。

 

マネジメントシステムの統合と実態とは?

“マネジメントシステムの統合”とは、どのようなことを指すのでしょうか。

“マネジメントシステム”の定義から、それぞれのマネジメントシステム要素であるマニュアル、

内部監査、マネジメントレビュー、帳票類や記録類を共有することも“統合”に該当するといえます。

 

しかし、実態についてはどうでしょうか。

 

マニュアルを一つにしても、その中でISO9001とISO14001に相当する箇所が別々に記載されていれば、

見直しの必要性もそれぞれに異なることになります。

 

内部監査やマネジメントレビューを同時に行っていても、ISO9001とISO14001に分けて実施すれば、手間は変わりありません。

“マネジメントシステムの統合”とは、企業が取組む事業、従業員が実施する業務、

これに関連する要素が統合されて、初めて“統合”といえるのではないでしょうか。

 

そして、ここが“統合”の本質ではないでしょうか。

 

企業活動とISOの統合について考えてみましょう

前回のブログでも記載しましたが、ISO9001とISO14001は全く異なる規格です。

しかし、企業活動の観点から見ますと、ISO9001は企業活動を品質保証側面から規定しているのに対し、

ISO14001は環境側面から規定しているにすぎません。

 

従って、企業活動の中では、それぞれの規格の要求事項に、同時に対応している場面が、少なからずあります。

 

不適合品の取り扱い

例えば、『不適合品』の処置について考えて見ます。

品質保証面からは、不適合品を顧客に提供することは出来ませんので、修正(手直し、修理または再製作等)します。

 

さらに、同じ不適合が生じないように発生原因を調査し、再発を防止する手立てを講じます。

 

これを環境側面から見ますと、製品を手直しし、修理しまたは再製作することは、材料やエネルギーの消費増大、廃棄物の発生に繋がりますので、再発防止対策は環境保護の面からも重要な活動になります。

 

従って、不適合品発生に伴う是正処置(原因調査、再発防止対策)の実施は、

品質面からも環境側面からも有益な行動であり、どこまでの対策を講じるかについては、

品質面(顧客満足度)と環境面(環境影響度)の両面から検討すべきでしょう。

 

新製品開発について

新製品の開発においては、開発担当者は、開発対象製品の機能、性能を満たすための仕様を決定するとともに、

その実現の容易さ、メンテナンス性、耐久性、安定性等も加味して製品の仕様を決めていきます。

 

同時に、その製品の使用に伴う省エネルギーなどの環境側面、

使用する材料の入手のしやすさや関連する規制への対応、

製品廃棄時に於けるリサイクル・リユースの可能性や容易性等についても考慮する必要があります。

 

このように、新製品開発においても、製品品質面及び環境側面の両面について十分な検討が必要です。

 

企業活動

一例として、不適合品への対応や新製品開発の場面について取り上げましたが、

企業活動の中ではいろいろな計画、選択のケースで品質面、環境面の両面から検討し、

決定・選択することが必要になることが多くあります。

 

即ち、企業活動の中では、品質面と環境面を切り分けて取り扱うことは実際的ではありません。

常に両面から検討し、取り扱っているといっても過言ではないでしょう。

とすると、企業活動の中ではMSをISO9001とISO14001に分けて扱うことの必要性は全く無いといえます。

 

業務にマッチングさせたISOに統合すればいい

このことを前提としてMSを構築すると、マネジメントマニュアルを始めとする文書類、帳票類、記録類については、

ISO9001用とか、ISO14001用とかでなはく、業務にマッチしたものを準備すればよいことになります。

 

それらの内容には、品質保証上の必要事項と環境側面からの必要事項が含まれますので、

品質保証の観点から見ればISO9001用となるし、

環境側面から見ればISO14001用になるというだけです。

 

マネジメントシステムを統合する場合には、

企業活動として実施している業務の本質をしっかりと把握した上で仕組みを構築し、

さらにISO9001及びISO14001の要求事項を満たしているか否かを検討し、不足する部分があれば、それを追加してください。

 

それで、統合は完成です。

 

“マネジメントシステムの統合”が本質的な議論にならない原因は、

企業活動に於ける環境側面を、いわゆる“カミ、ゴミ、デンキ”に注力しているからではないでしょうか。

一度、日常的に行っている作業を環境側面から見直してみては如何でしょうか。

 

注記ですが、『企業活動は品質面、環境面の両面から検討し、

決定・選択することが必要になることが多くあります。』が、全てでは有りません。

 

その典型が、“プロセスのアウトプット”です。

 

ISO9001では、製品を含め“有益なアウトプット”のみを取り扱いますが、

ISO14001では“有益でないアウトプット”(廃棄物や環境影響排出物など)も取り扱います。

 

従って、企業活動の中にも、品質面のみ、環境面のみから取り扱われる活動がありますので、

当然ですが、全ての活動について統合することまでは必要無いことに注意してください。

 

まとめ

今回のISO9001とISO14001を統合すべきかどうかについての記事はいかがでしたか?

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ISO9001/14001:2015統合マニュアルのポイント

 

※9001と14001統合のメリットについてはこちらの記事も参考になりますので、ご覧ください。

ISO9001と14001を統合すべきか。そのメリットとは?

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