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事故を減らすだけではない「ISO45001」を取得するメリット

投稿日:2019年9月18日  最終更新日:2025年2月13日

【この記事の執筆者】小川次郎

工事現場にもISO45001を取得するメリットがある

こんにちは、ISOコム マネジメントコンサルタントの小川次郎です。

今回のテーマは ISO45001を取得するメリットについて解説します。

今後の労働安全衛生マネジメントでは絶対に必要な規格です。

 

ISO45001の認証を取得するメリットは5つある

ISO45001を取得する動機は、会社によっていろいろあると思います。

おそらく、次の2つが大きいと思います。

 

  1. 仕事の受注に有利だから
  2. ケガや事故を減らしたい

 

これら以外に、「親会社からの要請」あるいは「元請からの要請」等もあるのでしょうが、

では、具体的にメリット5つを考えてみましょう。

 

メリット① 仕事の受注に有利だから

これは、建設会社に多いのですが、官公庁における建設工事の入札に参加する建設会社では、「経営事項審査」と「発注者別評価」の評価点が受注に大きな影響を受けます。

特に「発注者別評価」の評価点は入札の落札価格に大きな影響を与えます(この評価点により、最低価格札でない会社が受注できる可能性があります)。

この評価対象にマネジメントシステムの評価が含まれているため、ISO45001の認証の大きな動機になっています。

また、民間企業においてもISO45001を導入している企業は差別化の一つの要素としています。

 

【豆知識】

官公庁における建設工事の入札に参加する建設会社には「客観的事項」と「発注者別評価」の審査結果を点数化して順位・格付けが行われます。

このうちの「客観的事項」にあたる審査が「経営事項審査」です。

経営事項審査:日本の建設業において、公共工事の入札に参加する建設会社の「経営状況」及び「経営規模等」(経営規模、技術的能力、その他の客観的事項)などの客観事項を数値化した、建設業法に規定する審査。官公庁の入札資格及び入札評価に使用している。

発注者別評価:経営事項審査の評価項目としては対応するが、発注者別評価点では、共通のものさしでは評価が困難であり、地域の施策ニーズ(技術力、社会性等)に応じた評価をしている。

 

【発注者別評価の主要項目】

・過去の工事成績(工事成績評定)

・技術力

・安全対策

・地域貢献

・コンプライアンス

・社会性(雇用・労働対策、福祉対策、環境対策等)

 

メリット② ケガや事故を減らしたい

もし、わたしが、経営者であり自分の事業に関係して“ケガや事故”の発生を予感させるものを感じて、“ケガや事故を減らしたい”あるいは“発生させたくない”と思えば、労働安全衛生マネジメントシステムの導入を考えます。

中でも、ISO45001の考え方が良いですね。

 

メリット③社員が安心して働ける

「安全が確保されている職場で働いている」という安心感、実際に事故や労災が減り、ヒヤリハットも減っていきます。

このことで従業員は、作業にかかる余計な不安やストレスが軽減され、日々の作業において安全が確保されていると感じ、仕事に集中できるようになります。

 

メリット④取引先や顧客との取引増につながる

企業は、労働安全衛生管理が適切に行われていることを、第三者に認証されることで証明できます。

突発的な事故やけがにより、対応人員が欠けることによる品質低下や納期遅延リスクの可能性が少なくなります。

それによって安定した製品やサービス提供が期待でき、競争との差別化が進み、取引拡大につながる可能性があります。

 

メリット⑤優秀な人材が雇用できる

ISO45001の認証取得により、「従業員の安全と健康を重視し、積極的に安全管理に取り組んでいる会社」という評価を社外に示すことができます。

それによって従業員の定着率の向上、リクルート、人財採用の強力なメッセージにもなり得ますので、中長期視点では持続的な人材確保が可能になり競争優位性が生まれると言えます。

 

一方でデメリットにはどんなことが考えられるでしょうか。

 

ISO45001の認証を取得するデメリット5つ考えてみた

では、続いて、デメリットについても5つほど考えてみましょう。取り組む際にこの辺りを整理しておかれるとよいでしょう。

 

デメリット① 導入や維持にコストがかかる

ISO45001の導入時には、コンサル費用、文書整備、社員教育など初期費用がかかります。

取得後も定期的な外部審査、規格改訂対応のためのコストが継続的に発生します。

 

デメリット② 現場作業の負担が増える可能性がある

職場内で事故やけがのリスク評価、対応策の検討や実施、その後の定期的な点検や監視、それに関連する記録の作成や報告義務などが求められます。

このことで、従業員にはこれまで以上の業務や管理が発生することが予想されます。

特に、現場での煩雑な記録作業や複雑な手順が現実と合わない場合、従業員の負担感が問題、業務遅延や安全確保事態に影響が及ぶ可能性があります。

 

デメリット③ ISO45001の活動自体が形骸化する。

ISO45001が受注目的や認証取得を優先して導入され、特に現場で「働く人」の同意を得ずに進めてしまうと、従業員は「形だけのシステム」であると感じてしまいます。

結果として必要なけがや事故リスク評価やその対応策をまじめに取り組まなくなり、軽視されることがあり得ます。

これにより、安全意識が上がらず、労働災害防止の効果がでずに、更に、形骸化が進む可能性があります。

 

デメリット④社員全員への浸透に時間と労力がかかる

ISO45001は、新しい安全管理ルールとけがや事故リスク管理が必要です。

このルールや手順を従業員に理解させ、日常業務に組み込む必要があります。

しかしながら、従業員の知識や意識の差により、全員が一律に理解・実践するまでに時間がかかります。

そのための繰り返しの教育が必要となるため、継続的な教育と管理の負担が大きくなります。

 

デメリット⑤規格改訂や法令変更に対応する負担がかかる

ISO45001は数年ごとに規格の見直しが行われ、基準が改訂されます。

また、労働安全衛生に関する法令も変更されるため、企業はその都度、文書や手順を最新の基準に更新する手間や労力が必要になります。

そのたびに、従業員への再教育が必要となり、特に管理部門に業務負担がかかります。

また、法令に適合しないと罰則や取引停止のリスクがあるため、迅速で確実な対応が求められます。

ただ、法令順守はISO45001の取り組みとは関係なく必要ではありますね。

 

“独り言”

“安全”というものをどのような視点で見るかによって、対応は変わってくるよね。

★ことが起こってからでは遅いですよね

★経営者はよく「社員は宝です」と仰いますよね。本当に大切にしているのでしょうか。その割には人使いが荒くないですか。社員の頑張りに頼っていませんか。社員との対話を真剣にしているのでしょうか。

★また、大きな問題が発生すると、“このようなことは想定していませんでした”とおっしゃいます。本当に想定する努力をしておられたのでしょうか。

★“安全”には「人手」「時間」と「お金」がかかりますよね。最適解を求める必要がありますよね。

 

ISO45001規格要求事項とその内容を示してみました。

規格要求事項 内  容
4.組織の状況 組織の課題・問題点を理解しなさい
5.リーダーシップ及び働く人の参加 経営者は働く人と話し合って、方向性を示しなさい
6.計画 それに向かっての計画を立てなさい。それにはリスク、法令、関係者の要求を考慮しなさい
7.支援 計画実行に当たっての必要なものは段取りしましょう
8.運用 計画を実行しましょう。緊急事態も考えておきましょう
9. パフォーマンス評価 計画実行したことの結果はどうだったのか考えましょう
10.改善 上手く行かなかったことを反省して、もっと良い方法を探しましょう

いかがでしょう、先ほどの“独り言”に見事に対応していると思いませんか。

しかも、認証を取得するということは、定期的に、審査を行い、方向性が間違っていないかを判断して、修正の方向性を示していただけます。

加えて、このシステムの基本スタンスは、“得られる結果”と“費やす手間やコスト”のバランスを重視しています。

ある方法が最適だが、“費やす手間やコスト”が大きいので、次善の策として、パーフェクトではない方法を採用して実施することを“よし”としています。

 

現在の労働安全衛生マネジメントシステムの流れとは?

これまでの我が国の労働安全衛生マネジメントシステムは、OHSAS18001、建災防のCOHSMSが主流でした。

しかし、中災防(中央労働災害防止協会)は労働安全衛生マネジメントシステムのISO化及びISO45001の日本への導入に主導的立場で参加されたこともあり、OHSAS18001の認証機関からISO45001の認証機関へと切り替えています。

 

また、他のISOの認証機関もOHSAS18001からISO45001に切り替えています。

このような状況を考えると、ISO45001が日本での労働安全衛生マネジメントシステムの中心になっていくことは間違いないことと思われます。

 

おススメは、今まで労働安全衛生問題を会社の仕組みとして対応されてこなかった企業です。

ISO45001を導入すると“ケガや事故を減らす”ということに絶大な効果が上がると思います。

 

今や、労働安全衛生問題は、危険が目に見える建設会社や大型の動力装置や多量の危険物を取り扱う会社だけではないのです。

交通事故や、過重労働による疾病(うつ病、自殺等)、扱う商品・資材の荷捌きを行うバックヤードでの事故、火気や高温物質(油、水蒸気等)を取り扱う厨房等における事故等を考えると、第3次産業と言われるサービス業も決して例外ではなく、働く人の数も多く、結構無防備のような気がします。

また、サービス業は他産業に比して相対的に増加傾向にあります。

このような企業こそ、ISO45001の導入は“ケガや事故を減らす” ということに絶大な効果が上がると思います。

 

まとめ

いかがでしたか、ISO45001を取得するメリット、デメリットについて少しでもご理解いただけましたでしょうか。

 

怪我を減らし、メンタルにも配慮する。

こういうことを怠ってしまうと、発生した場合には、大切な従業員が働けなくなったり、生産性が下がります。

採用できる人が減っていくなか、このまま放っておいてあなたの会社は大丈夫ですか?

ISO45001を取得される際は、ぜひ当社にご依頼ください。認証取得まで丁寧にサポートいたします。

 

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