リーダーシップ ISO9001 2015年版
投稿日:2017年12月11日 最終更新日:2025年9月16日
皆さんこんにちは。ISOコム (アイソコム)芝田 有輝です。
今日は、リーダーシップ ISO9001 2015年版について、お話ししてみたいと思います。
結論から言いますと、
“経営トップは、ISO9001を有効活用し、目指す事業成果を達成してください。”
とまとめられると考えます。
では、詳細を見ていきましょう。
Contents
ISO9001の章立て・構成とは?
ISO9001は、4章~10章の7章立てで構成されています。
その中の5章で『リーダーシップ』という、まさに経営層に向けた要求項番があります。
規格にはどのようなことが書かれているのでしょうか。ISOコム流に口語体で表現してみましょう。
ISO9001にはリーダーシップがどう書かれているか?
まずは、規格にはどのように書かれているのか見てみましょう。
5.1 リーダーシップ及びコミットメント
5.1.1 一般
トップマネジメントは,次に示す事項によって,品質マネジメントシステムに関するリーダーシップ及びコミットメントを実証しなければならない。
a) 品質マネジメントシステムの有効性に説明責任(accountability)を負う。
b) 品質マネジメントシステムに関する品質方針及び品質目標を確立し,それらが組織の状況及び戦略的な方向性と両立することを確実にする。
c) 組織の事業プロセスへの品質マネジメントシステム要求事項の統合を確実にする。
d) プロセスアプローチ及びリスクに基づく考え方の利用を促進する。
e) 品質マネジメントシステムに必要な資源が利用可能であることを確実にする。
f) 有効な品質マネジメント及び品質マネジメントシステム要求事項への適合の重要性を伝達する。
g) 品質マネジメントシステムがその意図した結果を達成することを確実にする。
h) 品質マネジメントシステムの有効性に寄与するよう人々を積極的に参加させ,指揮し,支援する。
i) 改善を促進する。
j) その他の関連する管理層がその責任の領域においてリーダーシップを実証するよう,管理層の役割を支援する。
5章(口語訳・ISOコム独自解釈)
では、これを口語訳でざっくり表現してみましょう。
5.1 リーダーシップ及び約束(宣言・宣誓・約束)
5.1.1 一般
トップマネジメント(経営層・社長、取締役層 以下経営層という)は、次に示す事項によって,ISO9001に基づく仕事の仕組みに(以下QMSという)関するリーダーシップ及び約束を果たさなければならない。
a) QMSが品質確保に役立っているかの説明責任を負う。
b) QMSに関する品質方針を作り、方針を達成するための目標を作る。内容は事業や事業戦略と合致させる。
c) 事業=ISO9001にする。
d) プロセスアプローチと、リスクベースの考え方を活用する。
e) QMSに必要な経営資源(人・モノ・金・情報)を利用できる環境を与える
f) 仕組みやルール通りに仕事をすること重要性を組織内に伝達する。
g) QMSが事業目的や結果を達成できるような仕組みにする。
h) QMSが有効性に機能するよう関係者を積極的に参加させ,指揮し,支援する。
i) 仕組みの改善を促進する。
j) 管理層がリーダーシップを発揮できるような環境を提供する。
ISO9001:2015を一言でまとめてみた
ISO9001:2015を一言でまとめてみますと、「良品・良質サービスを、顧客と約束を守って、継続して提供できる仕組みを作り、顧客満足の向上を図り、リピート顧客を獲得する」と言えると考えています。
これを前提として、a)~以下の項番を詳しく解説します。
a)QMSが品質確保に役立っているかの説明責任を負う。
ISO9001の仕組みがきちんと働いて、QMSが会社の品質を保つ仕組みとして、きちんと機能し成果を出していることを、説明しなければならないという意味です。
経営層として、ISO9001の効果を把握し、説明できるようにしておくということですね。
b) QMSに関する品質方針を作り、方針を達成するための目標を作る。内容は事業や事業戦略と合致させる。
・良品・良質サービスの継続供給のための方針を作る。
・この方針を達成させるために、具体的(達成度が判定可能)な目標を作る。
・方針や目標は、ISO9001を取得する会社や工場などの事業内容や事業戦略(経営理念、社是、中期経営計画、事業計画書など)と内容を合わせる。
上記を通じて、自社なりの唯一無二の品質方針が出来上がります。
c) 事業=ISO9001にする。
ISO9001のシステム(仕組み)を構築する際には、自社の業種・業態・規模などを踏まえて、実態を反映させること。逆に言えば、どこかの会社のコピーやお仕着せ、理想像を仕組みにするのではなく、会社の事業=ISO9001の仕組み になるようにする。
よくあるのは、中小企業が大企業の仕組みをコピーしてしまうとか、業種に合わない管理の仕組みを含めてしまうとか、規格要求を課題解釈して余計な業務を仕組みの中に含めてしまうとかです。
逆に言うと、ISO9001の審査に合格するためだけの仕事や記録等はNGです。二重管理もNG。そういうものを極力少なくして、本業に如何に沿った仕組みを作るのかを、規格自体が要求しているとも言えます。
d) プロセスアプローチと、リスクに基づくとは、考え方の利用を促進する。
プロセスアプローチとは、仕事をバラバラの作業ではなく、つながった流れとして管理する考え方です。
従来の日本の品質管理は、検査を充実させて不良品を外部へ出さない方向でした。
しかし、プロセスアプローチは、一つ一つの工程・プロセスを、4Mや5Mで管理し、その工程・プロセス毎に良品・良質サービスを作り込み、その工程・プロセスをつながった流れで管理することで不良を出さないようにする、という考え方です。
リスクに基づく考え方とは、トラブルや失敗が起こりそうな所を前もって見つけ、手を打つ考え方です。
つまり経営トップは、会社の全ての仕事を「流れ」で見て、問題の芽を早く見つけて対策を打つ考え方を社内・社員に広め、実際に使われるような環境を整える事であると言えます。
いずれも、不良やクレーム等のドラブル「予防」の観点の考え方になります。ISO9001の規格自体がそのような予防の観点で作成されています。
e) QMSに必要な経営資源(人・モノ・金・情報)を利用できる環境を与える
ISO9001の構築・運用に必要な経営資源を利用できる環境を、管理層や従業員に与える事であると言えます。
経営資源は、一般的には、人・モノ・金・情報と言われています。
ISO9001では、7章に支援という章があり、ここでは、支援の詳細として、以下に関する要求事項が書かれています。
7.1.2 人々
7.1.3 インフラストラクチャ
7.1.4 プロセスの運用に関する環境
7.1.5 監視及び測定のための資源
7.1.6 組織の知識
7.2 力量
7.3 認識
7.4 コミュニケーション
7.5 文書化した情報
ざっくり言いますと、設備、作業環境、測定機器、外部内部の情報、人の力量、人の認識、コミュニケーション、ルールを書いた文書、仕事の結果の証拠を必要十分に与えてください、ということです。
設備:建物・設備・輸送機器・情報通信機器などを調達する、故障しないよう点検、メンテナンスを行う
作業環境:良品良質サービスを提供する上で必要な温度・湿度、高輝度、衛生、騒音・振動などを管理する、従業員が安心安全な環境で働けるようにする
測定機器:必要な制度を確保した測定機器を用意し、精度が狂わないよう適切な環境で管理する。
外部内部の情報:良品・良質サービスを継続して提供するための知識・情報を利用できるようにし、適宜更新してアクセス出来るようにする。
人の力量:良品・良質サービスを継続して提供するために必要な人の力量を明確にして、その力量を確保した人に作業させるようにする。
人の認識:品質方針や品質目標を知り、自分の仕事を決められた仕組み・ルール通りに行うことで、不良やクレームを出さないよう認識させる
コミュニケーション:良品・良質サービスを継続して提供するために必要な内部の情報交換、外部との情報交換野庭を設定し、運営管理する。
ルールを書いた文書、仕事の結果の証拠:ルールを書いた文書や仕事の結果の証拠
は、最新情報を必要な人が必要なときにアクセス出来るようにし、その情報は保護されること。ルールを書いた文書は必要時に更新されていること等
よって、ISO9001でいう資源とは、上記を、品質方針や目標の達成に向けて、必要十分にあたえてください、ということだと言えると考えます。
f) 仕組みやルール通りに仕事をすること重要性を組織内に伝達する。
要は、会社内のガバナンスを効かせてね、ということです。
ISO9001の仕組みやルールで決めていることを守ることが、品質確保、不良削減、クレーム低減などに重要であると言うことを会社内に伝達することであると言えます。
この辺りは、第三者審査で、実際の作業現場で働く従業員の方に、審査員から質問されたりすることも多いですね。
g) QMSが事業目的や結果を達成できるような仕組みにする。
ISO9001の仕組みを構築し、運用することで、事業目的や目指す結果(成果)を達成できるような仕組みを作ることを要求しています。
つまりは、ISO9001=会社の事業そのもの であることは規格が求める前提であることが分かりますね。
h) QMSが有効性に機能するよう関係者を積極的に参加させ,指揮し,支援する。
ISO9001の仕組みの運用が効果を発揮する、つまり、不良低減やクレーム削減、歩留まり改善等、会社が目指す目標や成果を達成できるよう、仕組みが効果を発揮できるように、会社内の管理層や従業員を積極的に参加させ、その人たちを指揮し、動けるような環境を整える、といえます。
管理責任者が1人で、とか推進事務局の数人でISO9001を回しています、とか耳にしますが、これは規格が求めていることとは異なるような気がしますね。
規格は、“全員参加”を要求しているようです。
i) 仕組みの改善を促進する。
ISO9001の仕組みの改善を促進させてください。つまり、一度作った仕組みを、改善していってほしいという事です。
では、どんな機会に仕組みの改善をするのでしょうか。
ケース1:
例えば、不良やクレームが発生した場合の再発防止策を通じて、製品製造の仕組みが改善される。失注理由の原因対策として、顧客要求の把握の仕方の仕組みが改善される設計・開発起因の不良やクレーム発生の際には、設計・開発業務を再発防止の観点からルール変更を行うとか、
ケース2:
内部監査を実施して検出された不適合指摘の再発防止策として、仕組みやルールの改善と行う。
ケース3:
第三者審査を受けて、指摘された不適合指摘の再発防止策として、仕組みやルールの改善と行う。
等、色々な場面を通じて、仕組みやルールをブラッシュアップしていってください、ということですね。
j) 管理層がリーダーシップを発揮できるような環境を提供する。
規格は、経営層だけでなく、管理層にもリーダーシップを発揮するように、管理層へリーダーシップを発揮できる仕事環境の提供を要求しています。
何でも経営者が判断しないと前へ進めないのではなく、権限委譲の考え方も視野に入っていると推察されます。
まとめ
いかがでしたでしょうか。今回は、リーダーシップ ISO9001 2015年版 についてお話ししてみました。
ISO9001は、事業目的の達成の為に経営層自らがしっかり関与して、仕組みやルールの構築を行い、必要なリソースを提供して、成果が出ているかを把握検証し、更なる仕組みの改善へとつなげるということでまとめられるかなと思います。
ISO9001を認証取得を目的だけにして、審査を受ける会社が見られますが、それはとってももったいないことだと思います。
とても良く出来た規格ですので、経営層自らが関与いただき、目指される事業成果を達成するツールとして、ISO9001を活用、使いこなす位のイメージで取り組まれると、ISO9001にかけるコストは、経費ではなく、投資となりうると考えます。
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